「ここがヴァリア-か…。」 豪華、そして馬鹿でかい。ボンゴレ本部も相当大きいけど、ここも負けてないと思う。ああ、やばい。緊張してきた。かけていたサングラスをもう一度かけ直し、コンパクトに纏めた荷物を片手に持ち、インターホンを押す。 出ない。 ……5分後。 聞こえてなかったのかもしれないし、もう一度。 ……6分後。 出ない。 「…完全無視ですか、」 と呟いて、早くもくじけそうになって、帰りたいなー、って思った瞬間、殺気に気付き思わずしゃがみ込む。そして、ぎりぎりのところでナイフが頭上をかすめた。 「ししっ。王子の一瞬の殺気に気付いたんだ?」 金髪のきれいな髪にティアラをのせた、いかにも王子、ご降臨。 「…今、…本気で殺そうとしたの?」 まさかとは思うけど、恐る恐るその金髪の男の子に訊いてみる。 「王子が本気じゃない時なんてないから♪」 口元ににやりと笑みを浮かべてナイフをしまう青年。サングラス越しからでも十分わかる、その月のような金色の髪を眺めて、あたしはヴァリア-に来た事を初めて後悔した。 でもこんなところでうだうだしててもしょうがないし!この自称"王子くん"に頼るしかない! 「ねぇ王子くん、」 「お前馬鹿にしてんの?殺されたい?」 ししっと笑ってあたしの首筋にナイフを突きつける王子様。でもあたしも、だてにボンゴレ本部にいたわけじゃないから、少し身をかわしてよける。 「ごめんね、なんて呼べばいい?」 「お前結構やるね。…ベルフェゴール。ベルでいいよ。」 そう言ってまたししっと笑った。 「わかった。ねぇ、ベル。あたし、屋敷に入りたいんだけど。」 「部外者は入れねぇよ、ってまさかお前、姫とかいう奴?」 「あれ、なんで知ってんの?」 「あー。お前の事だったのか。朝から隊長がうるせぇ声で言ってた。」 「あたしの事を?」 「そ。“ゔぉ゙ぉい今日は姫っつー新しい俺の部下がくるからなぁ。覚えとけよぉ゙”って朝からうっせーの。王子、低血圧だからそこんとこ考えてほしいよ、あの隊長」 「…今屋敷に誰もいないの?」 「あ?いるはずだけど。」 「インターホン押しても誰も出てくれなった。」 「ああ、あれ壊れてるから。ししっ」 「……あたし、あそこで15分ぐらい待ったのに!…はぁ。」 がっくり。肩を落とすと、ベルが、 「ししっ。姫面白い、気に入った♪」 そう言ってまた、にやりと口角をあげた。 はぁ。なんだかほんとにすごい事になりそうな予感がしてならないよ、と思いつつ、ベルに手を引かれ、屋敷の中へと向かっていった。 |