「ふぅ…やっと着いた。」
目の前にそびえ建つ、この大きくて荘厳で近寄り難い雰囲気を醸しだしているお屋敷。
そう、これこそが独立暗殺部隊ヴァリア-のイタリア本部、そして、あたしが新しく働く場所。
一週間前。
「姫、君は新しい支部に行って欲しい。」
毎年この時期にある人事移動。あたしは、ボンゴレ本部の上司から、こう通達された。ボンゴレの人事移動は、他と違って、拒否する事も出来る。
「どこにですか?」
でもあたしは、断るつもりなんて最初からなかった。あたしの働きでボンゴレが少しでもよくなるなら、なんだってする覚悟なんだから。次の言葉を、聴くまでは。
「実は…、その…。九代目直属独立暗殺部隊ヴァリア-に、だ。」
「ヴァリア-、…ですか。」
最初のあたしの覚悟は見事に揺らいだ。ヴァリァ-以外なら、心よく承諾しただろう。でも、よりによってヴァリア-って。
以前、ヴァリア-に移動になって、3週間で帰ってきた仲間から聴いた話だと、ものすごい壮絶な現場らしい。ボスはあの九代目の息子らしくて最強でもあるが最悪でもある、と言っていた。他にも、ナイフがそこらじゅうから飛んでくるし、何かにつけてお金を請求され、声の大きい作戦隊長がいて、他にもおかまだとか、ボスにぞっこんの人とか…。ヴァリア-に移動になって、3ヶ月もった人はいないって噂は、結構有名。運が悪ければボスにかっ消される、とかなんとか…。
「あ、あたしですか…。」
聴いてる限りまるで地獄のようなところに、喜んで入る馬鹿が果たしているのか?あたしは八割方、断るつもりでいた。
「僕達としても、君のようなボンゴレの華のような女の子を、行かせたくはないんだけれどね…どうもむこうのスクアーロさんが、君の剣術の腕に惚れこんだらしくて。"あいつ以外を送ってきやがったら命はないと思えぇ"って言ってきたらしいんだ。」
「…それ、あたしが行くしかないじゃないですか。」
あたしの剣術の腕に惚れこんだ、か。あたしはまだ、普通で言う女子高生と呼ばれる年代。普通は甘くみるはずなのに、そんなあたしを引き抜きたい、と言ったその男に興味を持った。それに、あたし以外が行ったら殺されちゃうんでしょ?…あたしが行くしかないじゃん。それに誉められるのは嫌いじゃないし。
「行きます。」
これから起こる事も、死と隣合わせな現場らしい、って事も覚悟した上で、あたしは決断した。
「本当かい?姫ならやってくれると思ってたよ。それじゃあ、今日から一週間後に、ヴァリア-本部に向かってね。手続きはこっちで済ませておくから。」
「あ、わかりました。いろいろ有難う御座いました。」
「姫、つらくなったらいつでも戻っておいで?ここは、君のホームだからね。」
「ありがとうございます。でも、与えられる任務がある限り、やりきってこないと帰ってこれません。」
「はは…君は昔から、責任感の強い子だからね。頑張ってきなさい。」
その後、ボンゴレの仲間達が小さいけれどお別れパーティーをしてくれた。それだけであたしは、次の支部でも頑張れる気がした。みんなの「いつでも戻っておいで。」って言葉に励まされ、あたしはイタリアのヴァリア-本部へと向かった。






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