「ボスー!!!」
あたしは、さっきと打って変わって、信じられないようなテンションでボスの部屋のドアを開けた。

「…るせぇ、」
頭痛がひどいのか、眉を顰めてこちらを見るボス。

「あたし、やっぱりボスのこと好きなんです!だから、あきらめません!」


決めたの、諦めないって。そう思えたのも、ルッスのおかげだけど。
今のあたしに、怖いものなんて何もない。
多分ゴキブリを見たって、気絶しないとおもうの。

「それを、わざわざ俺に報告する必要があんのか。」
何を言い出すんだ、こいつは。的な目で見られてるけど、気にしない。


「大いにありますよー。でも、大事なのはここからです!」
あたしは、おもむろに黒縁メガネとハサミを取り出した。

ボスは、嫌な予感がしたのか呆れたようにあたしを見る。
でも、少し楽しそうに口元をゆるめてる。あたしはそれだけで満足。

「桜ちゃんと、あたしを一切区別してもらうために、」


ちょきん、


あたしは、自慢だったチョコレート色のロングヘアを、一気に切った。


「相変わらず、しでかす事が派手だな。」

ボスは、笑ながらあたしを眺めた。
まあ、自分で切るのにも、限界あるし、この後は美容師さんにやってもらうつもりなんだけどね。
そして、黒縁メガネをかけて、完成。

「いいですか、ボス。これからは、ちゃんとあたしを見て下さいよっ」

ボスは、おもしろそうに笑って、その質問には答えず、部屋を出ようとした。
多分、頭痛薬でも取りに行くのだろう。
あたしは、ドアの前に突っ立って、こっちにむかってくるボスをただ見つめているだけ。


一部分だけショートで、
慣れない黒縁をかけて、
ボスを見ることしか出来なくて、
仁王立ちしてるあたしはきっとすごく不恰好だけど、




「わりと似合ってんぞ。」




すれ違いざまに言われたボスの一言で、
今は世界中の女の子誰よりも幸せだと思うんだ。



あたしは、ちょっとだけショートになった髪の毛をおさえ、ボスの後ろ姿に叫ぶ。



「大好きです!」


まだまだこの恋は、始まったばかりかな?


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