「ゔぉ゙ぉい…姫、ちょっといいか?」
あたしの部屋のドアの外で聞こえる、スクアーロの声。
あの後、ベルが部屋まで連れてきてくれて、あたしを気付かって、何も聞かないでいてくれた。そして、おやすみの挨拶をする時に、あたしの手に飴を握らせて、無理すんなって言ってくれた。そんなベルの優しさに救われる。
自分の部屋に入って、すぐ寝れるわけもなく、ぼーっとしていたら、さっきのスクアーロの声。
正直、今は誰とも話したくない。落ち着きたいから。
「…明日じゃ駄目かな?あたし、任務で疲れちゃったんだよね〜」
出来るだけ、明るく。
出来るだけ、いつもの姫、でいられるように。
「さっきの話…聴いてたんだろぉ゙?」
え、…。
なんで知ってんの。…なん、で。
「え、…なんの事?」
平静を装っても、隠しきれない動揺が声を震わせる。
「報告書、忘れてたぞぉ。ボスの部屋の前にな。」
ああ、それか。
そのせいで、バレちゃったんだ。
「…入って。」
バレてるんなら、仕方ない。
スクアーロが、決まり悪そうに入ってくる。
「さっきは悪かったぁ゙…。」
ソファーに腰掛けるあたしの前の壁に寄りかかり、口を開くスクアーロ。
「スクアーロのせいじゃないよ。」
そうだよ、スクアーロのせいじゃない。だから謝らないで。
「あたしのせいだから。」
そう呟いた時、なぜか涙が溢れた。
悪いのはあたし。
桜ちゃんに似てたから?
任務で怪我したから?
…なんであたしが悪いのか、いまいちよく理解してないけど、なんとなくあたしが悪い。ボスに嫌われてるから。だから、あたし「それ以上自分を責めるな…」
スクアーロの綺麗な瞳があたしを捉える。
「姫はボンゴレには返さねぇ。ここで働いてもらうからなぁ。」
優しそうな目で、あたしに少し笑みをこぼす彼。綺麗な髪が少しなびく。
「でもボスが、」
「あいつも許可した。安心しろ…」
嬉しさと、寂しさと、どうしようもない複雑な気持ちになった。これ、喜んでいいのかな。
「俺は姫の味方だからな?」
そんな言い方、まるでボスが敵、みたいな雰囲気じゃない?まぁ実際、彼からしたら敵なんだろうけど。
「ありがと、」
乾いた笑みで、スクアーロに微笑みかける。
今日はもう寝よう。いろんな事がありすぎた。ボスに抱っこされて、期待しちゃって、現実知って。
とにかく。また明日から同じ毎日が始まるから。負けないように。
いつもと同じ。姫でいれるように。


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