「ゔぉ゙ぉい…なんだぁ゙?話って。」
相変わらず騒がしいカス鮫が俺の部屋に入ってくる。
「うるせぇ。」
「あぁ゙?ただ喋っただけじゃねぇか」
このうるせぇ口を、今すぐ燃やしてやりたい衝動に駆られるが、まだ抑える。今はそれどころじゃねぇ。
「あの女をボンゴレに送り返せ」
「…姫の事か、」
一瞬顔を曇らせて、瞬時に俺を見るスクアーロ。
「嗚呼。」
あいつがボンゴレに帰れば、全ては終わる。それだけだ。それだけの事だ。
「桜を思い出すからか?」
カス鮫は余計な事に首を突っ込まなくていい。てめぇは黙ってればいい。
「いいか?俺は桜の事を引きずってなんかねぇ。第一、桜とあいつとは全く違う。顔こそ似てるがな。」
そうだ。俺は引きずってなんかいねぇ。過去の女の事をいつまでもうじうじ言ってんのなんざ、だっせぇからな。だから毎晩娼婦を呼ぶ。機械的に抱く。その女の事なんか知りもしなければ、もう二度と会う事もない。それで十分だ。俺は、現状に満足している。不満などない。桜の事も、もう終わったんだ。
「だったらなんで姫を、「うぜぇんだよ、あいつは。」
…やたら俺につっかかってきやがったと思ったらいきなり素直になったり。めんどくせぇ。
「姫の剣の腕は確かだ。それはボスもわかってんだろ?」
「…いいからあいつをボンゴレに返せ。出来ねぇなら手段は選ばねぇ。」
言い過ぎだか。いや、これぐらい言わねぇとな。それにしても、もうこれ以上こんな事で頭を使うのはごめんだ。
そう思った瞬間、
ドアの外で、バサバサっと紙が落ちる音と、走り去っていく足音が聞こえた。
「ゔぉ゙ぉ゙ぉい…今のまさか、」
「…完全に聞かれてたな」



「あの女をボンゴレに送り返せ。」
「桜の事は引きずってねぇ」
「うぜぇんだよ、あいつは。」
「出来ねぇなら手段は選ばねぇ。」
なん、なの。
…あたし…報告書持って行っただけなのに。なんで、なんで。
ボスは、あたしの事、相当嫌いらしい。本気で、消されんのかな。ボンゴレ戻らなきゃいけないのかな。ちょっと前のあたしだったら、絶対喜んでボンゴレに帰っただろう。
でも今は。
帰りたくない。ここにいたい。みんなと過ごしていたい。ボンゴレに帰ったら、ルッスとおいしい紅茶を飲む事も、ベルと悪戯し合ったり、マーモンとレヴィとゲームしたり、スクアーロと一緒に任務帰りにアイスを食べたり出来なくなる。
そして何より、
ボスに逢えなくなる。
ボスが、あたしの事、追い出せって言ったのに。嫌いになれない。懲りないな、あたしも。ボスはあたしの事嫌いなのに。おかしいでしょ?あたしも、よくわかんないもん。
わけもわからず、無我夢中に屋敷を走って、今、どこにあたしがいるのかわかんない。とりあえず、ボスの部屋から離れたかった。現実を受け入れたくなかった。だから走った。その場に座りこむ。
「なに泣きそうな顔してんの?」
突然ベルがあたしの前に現れて、顔を覗き込んだ。
「あ、ベル」
一瞬でも、彼かもしれないと思ったあたしを呪いたい。
「迷子になっちゃってさ〜。あたしの部屋まで連れてって♪」
無理やり笑顔を作って、ベルに笑いかける。
「変な奴、」
不思議そうな顔をしながらも、ベルはあたしの手をとって歩き出した。
ベルの後ろ姿を見て、ちょっぴり息が苦しくなった。



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