「姫ちゃんって嬉しいときに下唇舐めるクセあるよね。」

ベル先輩のだだっぴろい部屋で、二人きりで次の任務の確認をしていた時、ふとそう言われた。

特に意識したことはないけれど、ベル先輩が言うなら、おそらくそうなのだろう。

「ほんとですか…。私すごい無意識でした。」

私はここ半年、ベル先輩の補佐として、任務の時もほとんど一緒に過ごしている。たまに今のようなオフの日ですら、作戦会議だと言って呼び出される。

ベル先輩と一緒にいる時間が長くなるのは嬉しいけど、どきどきするから心臓に悪い。


「あん時とか。あー…オカマがお菓子持ってきた時とか、」
「それはルッス先輩のお菓子が最高だから。」

おやつの時間はたしかに最高にうれしいから、美味しそうなお菓子をみて、下唇をぺろっとしちゃってるかもしれない。
他にはー、と真剣に考えて言葉を続ける先輩。

「任務、…特にSランク級の任務が成功した瞬間とか、」
「え、そんな時もですか…」

任務が無事終えられるのは私の何よりの幸せだけど、それは完全なる無意識だ…

「あとさー、」

しし、と笑ってひと呼吸おくせんぱい。

「俺に褒められた時とか。」

べるせんぱいに褒められたとき……
だって、だって、嬉しいんだもん。
あああ、私きっと今顔が真っ赤だ。

「ま、まあ…たしかに嬉しいですけど…」

「アレ、すっげえそそるんだよね。」

ししし、とからかうベル先輩から目を逸らし、どうかこれ以上顔が赤くなりませんように、と祈る。

どきどき。
ばくばく。
どうしよ。
目合わせてらんない。

「せんぱ、い…話し合いの続きしましょ、」

バサッとわざとらしく机の上の資料をめくる。

「ね、俺、姫ちゃんのこと好きなんだけど。」

話し合いなんて最初からする気がなかったかのように、ソファにもたれてサラッと口にしたことば。

「、え。」

「これは本気のやつな。」

「、っ」

いつになく真剣な表情、だけどどこか余裕のある口元。まるで私が拒否することなんてない、と確信してるみたいで。
そんなこと言われて、どきどきしない女の子なんていない。


「ほら、また舐めた。」

ベル先輩が、ちゅ、と私にキスをする。

どうしようどうしようえっなにがおこってるのなになに

「姫ちゃんの答えは?」

「、答え、って…」

「カノジョ、なってくれるの」

彼女、……
ベル先輩の





えっえっえっこれ頷いていいの全国の王子ファンに殺されるんじゃないのああでも殺されてもいいくらい今私幸せだからえっとえっとえっと

「う、ん。」

言い終わった瞬間、やけに冷静になって、カラカラの唇を、ぺろ、と舐めてる自分に気づく。
あ、私、嬉しいんだ。


「お前、それわざとやってんの?」

ずるいんだけど、
そう言ってベル先輩は右手で私の頭を抑え、私の唇をぺろ、と舐めた。

ああ、もう。最高にうれしい。



(ずるいから好き)





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