「おい、姫。…さっさとこの報告書を、…っ、。」

ごほんっ
けほけほ、


「大丈夫ですかーボスー?」

あたしの目の前の椅子にふんぞりかえり、いつものように任務の至らなさを叱咤されると思ってた矢先、

ボスが咳き込む。

「ごほっ、…。とにかく、さっさと書け。」

咳で多少苦しそうにしてはいるものの、本人は仕事を休むつもりはないらしい。


「あの、風邪薬持ってきま「うるせえ、っ。げほ、…そんな暇あったら仕事しろカス。」

あたしのこの親切さとか女子力とかとかとかを踏みにじったというか踏みにじる以前に踏みもせずにスルーしたボスなんか風邪ひいちゃえばいいんだっ。

なんて思ってもほんとは心配なあたしはボスが好きですはい。


「無理しちゃ駄目ですよ?」

とは言ったものの、もはやボスは怒る気力もないのか、キッとあたしを睨んで背もたれに身体を預けた。


ぱたん、とボスの部屋のドアを閉めると、げほんげほん、と咳き込む音がする。

あたしもいつまでもこうしてるわけにもいかず、いつもなら2時間はかかる報告書を、ものの30分で終わらせて、再びボスの部屋にむかった。

風邪かなあ。
心配だなあ。


こんこん


こんこん

「ボス。報告書持ってきましたーあ。」


Σ
まさか、まさかまさか!!

「ボス死んじゃやだ!!」
その言葉を言うが早いかボスの部屋のドアを押し開ける。


しかしそこにはあたしの予想とは逆にベッドに寝転がって休んでるボスの姿。

あ、
寝てるのかな。

「…だ、れが死ぬかドカスが。っ、」

あ、
起きた。

心なしかボスの顔が赤い。
「ボス、熱ありますよこれ絶対。」
「ねーよ。」
「ねーよじゃねーよ。」
「、てめえ。」
「すいません調子乗ってタメ語使いました反省してますほんとすいませんだからかっ消さないで!」

はあ、
と呆れと嘲笑を含めたため息をついたボスはいよいよ辛そうだ。


こつん。

ボスの額とあたしのおでこをくっつけると、かなりの熱が伝わる。
顔が近いしあたしまで熱が出そうだけど。
こうやっていても、何も言わずにされるがままになっているボスにきゅんとする。


強がってるけど、
かなり顔も赤い。
かなりの高熱だと予想。
ルッスにお薬と栄養たっぷりのご飯作ってもらおう。


あたしがそんなことを考えてる間に、
ボスは目を閉じて寝ているように見えた。


「ルッス呼んできますね。こういう時には一番頼りになりますから。」

寝ているかもしれないけど、一応ボスに声をかけた。


身体が火照って、髪も少し乱れて、ベッドに横たわるこんな色気やばいボスはもう二度と見られないかも、と思い最後にくるっと振り返って思わずぼそっとつぶやく。


「ザンザス大好き、」

、です。
と最後にちゃんと加えたけれど、しょせん後付けだしもはやボスを名前で呼んだ時点でアウトだ。


寝ててよかった、と安堵しかけたあたしはドアに手をかけた。

「。ん…姫。…行くな、」

若干かすれた声で名前を呼ばれ、必要以上に反応してしまう。


「いいい今、ルッスを呼ん「そばにいろ。」


ずっきゅん。
駄目だ好きだ。
そんなことを思いながらボスが横になっているベッドの傍に歩み寄る。


そういえばあたしの告白はばれてないみたいだし。


こんなデレデレな発言が、熱に浮かされたせいだからっていうのはわかってる。
でもそれでも嬉しいの。
それが恋ってやつか。
あたし悟った(どや)


「ボス、さっきよりも顔赤いですよ。熱上がったんじゃ?」

調子にのってもういちどおでことおでこをくっつけようと顔を寄せる。

ぐっ
と顔を引き寄せられて唇が一瞬重なる。



あう。
熱のパワーすごい。
意識朦朧としてるとこんな大胆なことまで出来ちゃうの?
あう。

もっと長くちゅーしておけばよかった!
あ、あたしは変態なんかじゃないけどね。


「まだ足りねえのか」

ふっ、と笑い髪をかきあげるボス。
色男は熱があるときですら色っぽい。
無駄に色気溢れてる。ずるい。

「風邪うつしてやろうか?」


ふは、
と吹き出しつつ少しまどろんだ瞳で見つめられたら、
もうあたしが発熱する。

もういっそ、2人で風邪引いちゃおうか。



手洗いうがいしません。
(顔が赤いのは)
(熱のせいだけじゃねえよカス。)





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