「あああもう!!!!!」


「うるせえな。」 

それもそのはず。この部屋にはボスとあたしの2人きり。ボスは仕事、あたしはいやいやながらもテスト勉強。

そんな中であたしが1人大声出したらそりゃうるさいだろうよボスさん。

はあ。

嫌になっちゃうよもう。

「ねえボス。」

「あ?」

「数  学  が  わ  か  ら  な  い  。」

そう、深刻な事態。
数学がわからない。
いや、わからないの次元の違いをちゃんとボスにわかって欲しいのあたし。

「どのくらいわからないかって言うとー…」
…、

「なんで地球が太陽の周りをまわるのかが理解できないくらいわからないの。」


例えがおかしいのは重々承知だけどさ、

「姫。」
「はい。」


「算数からやり直せ。」


この発言はひどいよね。
あたし、つるかめ算くらいはわかってるのに。
あと、和差算とかも出来る…はず。


「教えてよー。」
「自力でやれ。いつも人に頼るから出来ねえんだろ。」

そっけないなあ。
ひどいなあ。
馬鹿馬鹿。
まあボスの言うことが正しいのはわかってるんだけどね。

「あー飽きた。もー無理。」

あたしはペンを放り投げる。
ボスはちら、とこっちを見るけど興味なさげ。

あーつまんない。
数学はわからないし、ボスは構ってくれないし、ベルとフランは任務だし。
レヴィと遊ぶとか論外。ルッス姐はお菓子作ってるし、…

「あ。」


「スクアーロがいるじゃーん!」

そうだなんで今まで忘れてたんだろ!
スクアーロなら、数学わかんなくても遊んでくれるし、今日きっと任務ないし、絶対今…暇…、
さ、…殺気が。

殺気がやばいよ、
向き合ってるボスからのただならぬ殺気が!!


「おい、」

「…はい。」

不機嫌なオーラを出しつつも、ボスはあたしの数学の教科書を手に持ち、ざっと眺める。



教えてくれるの、?かな?

そんな淡い期待をする。
ボスをちら、と見たら目があった。

お、教えてくれそう。
らっきー。

そう思った矢先、ボスは教科書を置き、あたしのところまできた。




「高くつくぞ、」


そう笑ってあたしを華麗に押し倒す君は、数学よりも手強い相手。


数学が倒せない。
(でも)
(君と一緒なら。)





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