いつでも俺は正義だから


「うーん…俺はそんな風に思わないけどなー」

現在昼休み中。
そう言いながらパックジュースを音をたてて吸うのは幼なじみで親友の大夢。

「えー…あきらかにヒロトはなんかこう変わったんだって!」
「そうかな?別になんも変わってない様に見えるけど。大体ヒロトの何が嫌だっていうの?顔よし性格よしで文句ナシの完璧な人間、同性っていう点を覗いたら文句なしの自慢の恋人じゃん。」
「う゛…っ」

そう、確かにヒロトは凄い奴だ。
けど、なんだか最近は昔とは変わった気がする。

「久しぶりにリュウジが俺に相談してきたから何かと思ったらそんな事かよー。そりゃあヒロトだって雰囲気位変わるって、な?」
「……」
「それになんとなく変わったってだけで直接的な変化は無いんだからさ。リュウジ風に言えば論より証拠、みたいな?」

確かに大夢の言う通りだ。
俺が持ち掛けたのは相談とも言えない様な内容に見える。
けど俺からしたら大問題、大問題なんだよ。

「ただいまー緑川。」
「あっ、…ヒロト、」

今まで係の仕事かなんかで教室に居なかったヒロトが帰ってきた。
大夢はじゃあこれで、と言って教室から出ていった。

「さっきまで先生に頼まれた係の仕事してたんだ、疲れたよ。所で三浦君と何話してたの?」
「え、ぁ…勉強について。」
「勉強?解んない所でもあるの?そんなのいつでも俺が教えてやるのに。ほら、どこが解んないの?見せてごらん?」

もう解ったからいいよ、と断っておく。
次からは俺を頼ってくれよ、とヒロトは微笑んだ。

今、俺とヒロトの間には曖昧な距離がある。
詳しくいうとヒロトは俺と距離を縮めようとするけど俺はなかなか縮める気にならない、みたいな。
いや、別に無視したりつっけんどんな態度ってわけじゃなく、ただ前より自分から話しかけたりしなくなっただけ。
じゃあなんでそうしてるのかって言われたら正直、自分でも分からない。
ヒロトが嫌いと言われたら否定するけど好きと言われても否定しちゃう。
よく、分からないんだ。
少なくとも、前みたいに胸をはってヒロト大好き!と言えてたあの頃とは違うらしい。
そして、ヒロトに対してよく分からない恐怖に似た感情を抱くようになった。
そんな俺は多分恋人失格なんだろうな。

学校から家に帰ってもずっとそんな事を考えてた。
昔はヒロトの事が素直に好きだった、大好きだった。

『お前女みたいな顔してやんのー本当は男じゃねぇんだろ!』
『ちっ、違うもん!俺はちゃんと男だもん!』
『この嘘つき!』

今より少し小さい頃、俺の女顔をからかう奴等がいた。
女みたいだとか男じゃないとか挙げ句の果てに嘘つきだとか散々言われた。
からかってる方からしたら男なのに女みたいなのが面白いとかその程度にしか思って無かったんだろうけど。
でもこっちからしたらたまったもんじゃない、好きで女顔に生まれてきた訳じゃないのに。

『お前ら、リュウジに何やってんだ!』
『ヒロ、ト…』

けどヒロトはいつでも俺の味方だった。
からかわれている俺をいつも助けてくれた。
父さんに気に入られていて当時から権力を持っていたヒロトにからかう奴等も反抗出来ず、慌ただしく向こうへと逃げていく。

『大丈夫?リュウジ。』
『ありがと、ヒロト…』
『ううん、リュウジを守るのが俺の正義だから。』

当時は正義とかよくわからなかった。
けど俺にはそのときのヒロトはヒーローに見えた。

もし、今でも俺がからかわれていたとしたらヒロトは変わらず俺を守ってくれてるだろう。
俺を守ってくれるのは今も昔も変わってないだろう、でもそれ以外の何かが変わってしまった。
もしかしたら俺を守る事が、ヒロトの正義が、ヒロト自身を変えてしまったのかな。
まぁそんな事考えても意味無いから俺は考えるのをやめてベッドにダイブした。






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