お前の笑顔があればいい昨日、お日様園の皆が韓国から帰ってきた。
せっかく緑川と二人きりになれたのにまたいつもどうりだ。
緑川は皆に俺の風邪が仮病だった事は一切言わなかった。
緑川はとても優しいからね。
でも、そのせいで色々とトラブルにまきこまれたりしちゃうんだよね。
おかげで俺はハラハラしっぱなしだよ。
さて、そんな事はおいておいて本題に入ろう。
緑川はここ最近、俺を避けるようになった。
なんとなく、と言った感じにさりげなく避ける。
いつも俺達の間は距離が空いてるし、緑川から話題は振らないしぎこちない。
今まで俺に向けてくれていた輝く笑顔も見せなくなった。
「…なんでだろう、俺緑川に嫌われる様な事したかな……?」
ふと呟いた言葉、隣で寛いでいた玲奈にがっちり聞かれた。
「最近お前達は見ててギクシャクしてる感じだな。リュウジがお前を避けていると言うような…」
「そうなんだよ。」
「私はヒロトに原因があると思うがな…何か思い当たる節は無いのか?」
「うーん…」
頭を回転させるけど、思い当たる節は無い。
「分からないんだったら本人に聞きにいけばいいではないか。」
「…そうだよね。」
「余り問い詰めすぎるなよ。」
俺は玲奈の助言を受けて、緑川の部屋へ向かった。
けど緑川は部屋には居なくて。
姉さんに聞くと、リュウジなら庭にでも居るんじゃない?と言うことなので庭に出た。
案の定、緑川は庭に居た。
「何してるの?」
「っ!ヒロ、ト。」
緑川は体を強ばらせた。
俺は隣に並んで目前の花を見た。
「向日葵…」
そう、向日葵。
向日葵が凛々しく咲いている。
おそらく緑川はこの向日葵を見ていたんだろう。
「綺麗だね、向日葵。」
「あ、うん…綺麗…。」
緑川はそろっと俺から離れようと横に移動した。
けど俺はその手を掴み引き寄せ抱き締めた。
緑川は突然の事に慌てて俺の腕の中から出ようともがく。
けど俺は腕の力を更に強めて離しはしない。
「ねぇ、緑川。」
名前を呼んだだけなのに緑川はビクッと体を跳ねさせた。
「どうして今俺から離れようとしたの?俺の事、嫌い?」
「それは…っその……、」
動揺する黒い瞳をしっかりと見据える。
「……ごめん、なんだか…怖いんだ。」
怖い?何の事だろう。
もしかして、またあの女子に嫌がらせをされている、とか?
そんな、いや、でもあの女子はまだ入院中の筈。
まさか緑川が見舞いに行った時に暴言を吐いたとか?
それは許せない。
あの女、息の根止めてやろうか。
「緑川、」
俺がそう呼ぶと緑川は目を逸らした。
嗚呼、可哀想に、あんな女にまた苦しめられてるんだね。
でももう大丈夫だよ、そう言って緑川を更に抱きしめる。
「俺がお前を守ってやるから。」
「…っ、ちが、う……、」
途切れ途切れに、違う、と言う緑川。
一体何が違うんだろう?
それによく考えたらあの女が怖いのになぜ俺を避けていたんだろうか。
あ、もしかしてまた俺に心配させたくなかった、とか?
まったく、緑川は他人を思いやりすぎだよ、まぁそこがいい所なんだけど。
そんな事をぼーっと考える。
向日葵は俺達の隣でまだ凛々しく咲き誇っていた。
俺はただこの向日葵のような緑川の笑顔が見たいんだ、それだけでいいんだ。