俺を心配させないで


最近緑川は元気が無い。
原因は多分あの女子だろう。
あんな奴のために緑川が気を病む必要は無いのにね。
と言う事で俺は緑川を元気付けるべく、今緑川の部屋の目の前にいる。
軽くノックをしたら、誰?とドア越しに聞いてきた。
俺だよ、入るね?と言ってドアを開けると緑川はちょこんとベッドで三角座りになっていた。

「緑川、お前の好きなアイスだよ。これ食べて涼みな、ほら。」

そう言って差し出したのは緑川が大好きなアイス、『カリカリ君』のソーダ味。
緑川はありがとう、と言ってアイスを受け取った。
アイスを美味しそうに頬張る姿がとても可愛い。

「……本題に入るけど、最近緑川元気無いよ?お前は何でも1人で背負い込む傾向があるから、俺心配だな。」
「!、」

アイスを頬張っていた緑川は体を硬直させた。

「俺はお前の彼氏だ。だから好きなだけ甘えてくれていいんだよ?無理にとは言わないけど、お前の背負っているものを俺にも少し分けてくれよ。1人で背負い込むより2人で分け合う方が楽だよ?」

そう言って俺は両手を広げた。
このポーズは俺に抱き付いておいで、と言うポーズだ。
案の定、緑川は俺に抱き付いてきた。
アイスがベッドに落ち、あーあ染みになるな、だなんて他人事のように考えていた。
だって今重要なのはアイスなんていう氷菓子じゃなくて、俺の腕の中にいる緑川なんだから。

「ヒロ、ト……俺、どうしたらいいのか分かんない…っ」

緑川の声はとても弱々しくか細いものだった。
俺は優しく抱き返し、話してごらん?と囁いた。

「暴力受けて入院した、隣のクラスの女子いるだろ…?実はあの日俺、あの子と途中まで一緒に下校してたんだ…っ!」
「うん。」
「だから、俺が、俺があの子を家まで送ってやってたら…あの子は………っ!」

まったく、ただ途中まで下校してただけの深い関係の無い女子をよくここまで気遣えるものだ。
緑川は本当に心優しい子に育ったね。

「…そっか。思いきって俺に打ち明けてくれてありがとう緑川。」

と言ってもすでに知ってたんだけどね。

「ヒロト、ヒロ、ト……」

ついには泣き出した緑川。
俺はまだ優しく抱き締めたまま。
俺達はしばらくお互いの体温を感じあっていた。

それから。
緑川は大分落ち着いたようで、俺は自室に一旦戻った。
戻って少し経ってからベッドのアイスの染み抜きでもやってやろうかなと思い、また緑川の部屋に行った。

「あれ?」

でも部屋は藻抜けの殻だった。
瞳子姉さんに聞くと、少し前に出かけたらしい。
俺はダッシュで家を出た。
緑川が何処に行ったのか?
そんなの決まってる、あの女子の入院してる病院だ。
折角邪魔者を排除出来たと思ったのに。
どうせなら息の根止めてやったらよかった。
そうこうしてる内に町外れにある病院についた。

「緑川!」
「えっ、ヒロト!?」

予想は的中、緑川は今病院から出てきた所だった。

「なんでヒロトがここに…」
「緑川の事だから、さっき話してた子のお見舞いに来てるかなって思ってね。」
「へへっ、そのとうり!」

へへっと笑った緑川には少し元気が戻っていた。

「結構元気そうだったよ、打ち所がまだ良かったんだって。不幸中の幸いだね。それに緑川君のせいじゃないよって言ってくれたおかげで気が楽になったよ。」
「それはよかったね、じゃあもう帰ろうか。」
「うん。」

俺達は手を繋いでお日様園へと続く道を歩き出した。
…ねぇ緑川、こんな事言ったら嫌われるだろうけど、実は緑川とあの女子が体育館裏で話してる時盗み聞きしてたんだ。
そこで知ったんだ、あの女子がフラれた腹いせに緑川に嫌がらせしてたって事。
緑川は優しいから許してやったみたいだけど、俺は許せなかった。
だから緑川とあの女子が別れてから俺はあの女子に殴りかかった。
そしてせっかく入院したのにわざわざ会いに行くだなんて、駄目だよ危険だ。
またあの女子に嫌な目に合わされるかもしれないだろ?
ああもう緑川、俺はお前が大切なんだ。
そして心配で仕方がないよ。






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