お前を苦しめるのは誰?


「緑川、一緒に学校行こう。」
「うんっ」

俺とヒロトはお日様園と言う孤児院で育ち、今でもここに住んでいる。
だから毎日ヒロトと一緒に登校できる、嬉しいな。
なんてったってヒロトは俺の大好きな自慢の恋人だから。
お互い同性で俺達が付き合ってる事は極秘、一部の人しか知らないんだけどね。
お日様園から学校まではあっという間だから5分もあったら学校に着いた。
ちなみに、俺とヒロトはクラスも同じなんだ。
教室に入ったら先に来ていたクラスメイトが挨拶してくれるから、俺達も挨拶し返す。
俺は自分の席にリュックを置いて筆箱とかを取り出していた。すると、

「ん?」

机の中に紙が入っている事に気付いた。
あれ、おかしいな、昨日机にプリントなんて入れたっけ。
そう思いながら紙を取り出す。

「…っ!!!」

一瞬、息が詰まりそうになった。
その紙には1面に『許さない』と言う文字が書きなぐられていた。
冗談じゃないよ、こんな呪われたプレゼント貰うだなんて。
しかもこの特徴的な字、どこかで見た事ある気がする。

「どうしたの緑川?」
「へっ!?」

いきなり声をかけられたから慌てて後ろを振り替えるとヒロトだった。
なんでもないよ、と言いながら俺は無造作にその紙をリュックに入れた。
まぁこの紙は後で処理する事にしよう。

………と、そのまま時は流れ、
結局紙は適当にゴミ箱に捨てておいた。
そして現在はヒロトと下校中。
ヒロトにあの紙の事を話そうかとも思ったけど、心配かけたくないしやめた。
しっかしなんなんだろうアレ。
俺、誰かに恨まれるような事したかな?
そう考えながら帰り道を歩いた。
その時はまだそんなに深くは考えてなかったけど、次の日、衝撃の出来事が起こった。
なんと、また机の中にあの紙が入っていた、しかも何枚も。
俺はとうとう怖くなって先生に打ち明けようかと思った。
だってこんな事されて平気な訳無い。

「緑川?その紙何?」

頭の中でぐるぐる考えていたらまたこのタイミングでヒロトに話しかけられた。
俺は慌てて紙をリュックに突っ込んだ。
宿題のプリントだよ、だなんて適当にはぐらかしたけどヒロトはそれが嘘だと見破ったようで。

「違うでしょ?昨日も何か紙みたいなの持ってた。その紙は一体何なの?」

ヒロトからの視線が痛い。
けど言ったら駄目だ、大好きなヒロトにだけは。
心配も迷惑も掛けたくないし、もしかしたらヒロトまでターゲットにされるかもしれない。

「ねぇ、緑川昨日から様子変だよ。何があったの?…お前を苦しめるのは誰?」

俺はヒロトの質問にごめん、とだけ言った。
ごめん、ごめんねヒロト、この事は話せないんだ。
するとヒロトは何か悟ってくれたのか、話したくなったらいつでも話してね、と微笑んでくれた。
ああ、なんて優しいんだろう。

実はと言うと、この悪趣味な嫌がらせの犯人はもう目星がついている。
犯人は隣のクラスの女子だ。
一昨日、同じように机の中に紙が入っていた。
けどそれは今みたいな呪われたものじゃなくて、『放課後体育館裏に来てください』と言うものだった。
そして、その日の放課後、体育館裏に行くとそこには女の子が。
その女の子は俺に好きです付き合って下さい、と言ってきた。
つまり告白。
でも俺はヒロトと付き合ってるから勿論返事はNO、しかもそん時はイライラしてたから適当に断っておいた。
そう、犯人は俺に告白して、そして俺にフラれた子。
だって昨日思い出したけど紙に書いてある字が同じなんだ。
でもフラれたからってこんな事するなんてただの腹いせ。
そりゃあ俺の対応の仕方が悪かったかもしれないけどさ…
とにかく、犯人は分かったんだ。
放課後にでも話をつけに行こう。

そしてあっという間に放課後。
ヒロトに先に帰るように言ってから、俺はあの女子を体育館裏に連れ出した。
女子は意外にも大人しく着いてきた。
体育館裏に着くと、俺はなるべく優しい口調で女子に聞いた。
嫌がらせの犯人は君なのか、と。

「…はい…っ…そうです、私が、…ごめんなさ、こんな事…ごめんなさい…!」

これまた意外に女子はあっさり罪を認めた。
ポロポロ涙を溢しながら必死に謝るその姿は酷く哀れだった。

「俺もあんな対応してごめんね。だから泣かないで。それに君は俺の事一途に思ってくれてたんだよね、ありがとう。」

俺がそう言うと女子は更に涙を瞳から溢れさせ、俺にいきなり抱き付いてきた。
引き剥がそうかとも思ったけど、まぁいいかと抱き付かれたままの状態でいた。
女子はまだ泣いていて、長い栗色の髪が涙で頬に張り付いている。

それから少し時間が経って女子が俺の体を解放した。
さて、お互い和解した事だしそろそろ帰ろうかな。
けどヒロトは先に帰ってる、寂しいけど1人で帰らなきゃ。
そう思っていると女子が、一緒に帰りませんか?だなんて言ってきた。
…うん、1人じゃ寂しいもん。
結局俺は女子と帰る事になった。
けど家の方向が逆ですぐに別れは来た。

「…じゃあ私はこれで。……本当にごめんなさい、そしてありがとう。」
「やだなぁ、そんな固くならないでよ。俺は君と付き合う事は出来ないけどこれからは友達として仲良くしよう。まさに雨降って地固まる、ってね!じゃあ。」

そう言って曲がり角を曲がると、向こうからすすり泣く声が聞こえた。
お日様園に着くと、瞳子姉さんらが俺を出迎えてくれた。

「ただいまーっ」
「おかえりなさい。…あら?ヒロトは一緒じゃないの?」
「え?ヒロトまだ帰ってないの?先に帰っておいてって言ったんだけどな。」
「寄り道でもしてるのかしら。」


次の日、学校に行くと何やら騒がしかった。
なんだこの騒ぎっぷりぷり、事件でもおきたのかな。

「なんかあったの?」
「リュウジにヒロト!それがな…隣のクラスの女子が下校中に暴力受けて入院したらしいぜ!ほら、あの髪長い奴。」

俺はまさかと思い真相を聞くと、そのまさかだった。
そう、あの子が。
昨日和解したばっかのあの子が暴力を受けて入院した。
しかも下校中って…俺と別れてからって事?

「家まで送ってあげるんだった…折角和解したのに………」

ふと視界に入ったヒロトが、笑ってる気がした。






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