秋風が頬を掠める。既に過ぎ去った夏の熱気を忘れさせてくれるには丁度良い。
大学から帰る途中、安形の携帯は着信を知らせる。ディスプレイには"加藤希里"と表示されていた。一つ笑みをこぼしながら応える。

「おう、久し振りだな」

『……おぉ』

その後幾度か簡素なやり取りを交わした後、用件を聞いてみた。
するとただ、

『…会いたくなっただけだ。悪ぃかよ馬鹿』

一言、可愛い罵倒が返る。
一つ学年が上がって少しだけ素直になったのか、と、疑問と嬉しさが混ざり合った何ともいえぬ気持ちを感じ、安形は二つ返事で承諾した。













******














会うのは何ヵ月振りだろうか。かれこれ六ヶ月──半年も会っていないような。
声はあまり変わらぬ印象を受けた。高校時代を思い出し、しみじみと浸る。
やがて呼び鈴が鳴り、彼の来訪を告げた。

「ん、入れよ」

「…お邪魔、します」

椿以外には決して使うことのない、慣れない敬語をぶっきらぼうに呟いて希里は家に入る。
少し伸びた襟足、少し大きくなった背中。着実に希里が成長していることが窺えた。

(椿に感謝、だな)

口許がだらしなくなってしまうのを抑える。
すると希里の方から話を切り出した。

「…東大は、楽しいか?」

遠慮がちに発せられた声。
安形は微笑を返して、

「楽しいのは楽しいけど、カッチカチ。
あれだったら椿のがまだ良い方だ」

「…そか」

「でも足りねンだ」

「………何が?」

コテンと首を傾げてみせる希里。それをまた笑いで返しながら呑気に言った。

「やっぱ、希里がいねーと寂しいよ」

鼻の奥がほんの少しだけツンとするのを感じながら、余裕そうにみせた。

ふと希里を見ると、何故か小刻みに震えている。
顔を覗き込もうとすると、逆方向に逸らされた。

「希里、どした?」

「うっせぇばーか」

声が震えていた。
何があったんだろう、希里の中で。
そう思いながら安形は相も変わらず覗き込むのを続ける。
すると希里が勢い良く振り返ったので、顎をやられた。
振り返った目は、涙で濡れていた。

「こっちだってっ、アンタがいねーと寂しいんだよ馬鹿!」

鼻先が赤くなっている。
希里はまだ続けた。

「…今まで半年くらい会えなくて、でもアンタはアンタで忙しいと思って電話なんか出来なくて。
でも、やっぱ駄目だった……会いたくて…っ」

最後の方は声がか細すぎて聞こえ辛かったが、安形にはちゃんと聞こえていた。

「希里、」

「うっせぇばか!ばか安形!」

「…おうともよ」

「ばか、ばか安形…っ」

希里の涙は止まることを知らない。ただひたすら涙を流す。
安形は希里を包むように抱き締めた。まるで半年分の隙間を埋めるかのように。

「ごめんな、
…これからは、毎日電話していいからよ」

「…っうう…」

ひっく、と嗚咽を繰り返す。安形は涙を舌で優しく舐め取った。

「っ…や、だ」

拒否が聞こえても、お構い無しに。
涙はやはり、塩っぱかった。

「俺はどっちかってーと甘党だ」

「…いきなり何だ」

「あんまり塩っぱいのは嫌いなんだよな」

「………で?」

「"甘くねぇ"からもう泣くな、俺に塩っぺぇ思いさせんな。
どうせなら、甘い思いさしてくれや」

泣き顔は一番嫌なんだ、と呟く安形。
あぁ、そんなだから好きになったんだっけ。
そう感じた希里は泣くのを止め、安形と額を合わせた。

「…寂しい日は毎日電話するからな、覚悟しろよ」

「望むとこだ、かっかっか」

高笑いの後、安形と希里は唇を合わせた。
約半年分のキス。
最後にしたキスはいつだったか忘れてしまうくらいの、甘い───




















***********


にと里様大変お待たせ致しましたっ!
リクエストと違ったらお教え下さいませ!
結論:安キリ最高ですね(^^)
等価交換にもならぬ物をお受け取り下さい…!
相互ありがとうございました!



***



あか、しろ、きいろ。の瀬田さんよりいただきました。
相互記念。ええ。キリたん泣かせてくれとお願いしましてね(・∀・)
お前どんだけ泣きキリたん好きなんだとか言わない。

萌 え た ! !

禿げ上がった ! ! ! !


泣きキリたん+ばかのコラボはにと里の大好物なのでごんす(^p^)
安キリよい。
安キリよい。
大切なことなので2回言いました。

今の時期にピッタリなお話でほっこりです(´∀`)
瀬田さん、どうもありがとうございました!!!





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