休日。
生徒会の男子メンバーでパーティをしようと言いだした安形。
買い出しに駅前に来た訳だが、思いの他大荷物に。それに加え、まだ具材が足りないなんて安形が言いだすもんだから、会長と榛葉と安形ですぐそこのスーパーに向かってってしまった。
希里は荷物の番をしててくれないか、と会長に言われてしまったら、俺はそうするしかない。
だから外で、今まで買いそろえた荷物の番をしている訳だが。

…さっきから、強い視線を感じる。

寒気さえする。なんなんだこれは。
会長に言われた手前、下手に動けないし、なんかもう、気味が悪い。
俺は必死に首をひねり、その根元を探す。すると案外すんなり見つかったわけだが…男だ。こういう時は、大体女なのだが。

大人しそうな容姿。少し年上だろうと予想させる雰囲気、そして、なかなか出来た顔に一瞬、気を取られていたら。


「もしかして加藤希里くんですか?」
「…ハイ?」


腕を掴まれた。物凄い笑顔で。



……‥Quirky Quality



知らない人についてっちゃ駄目よ。

いつだか、俺が小さい時によく聞いた言葉が蘇る。目の前の男は楽しそうににっこりと笑ってコッチを見ているし、俺はこの男を知らない。


「誰だアンタ」
「加藤くんのファンですよ」
「…ふぁん?」
「はい」


笑顔のままの彼は、俺にそう言った。聞き間違いかと思ったから念の為にと復唱したが、やはり間違いはなかったようだ。

…なに?ファン?


「どういう意味だ」
「加藤くんのファンなんです」
「はぁ?」
「加藤くんの言葉使い、仕草、少し狂暴な瞳も、深く私の心を貫いたんです」
「な…なに言ってんだアンタ…?」


男の言葉使いは酷く丁寧で、表情も柔らかい。威圧感など一切感じられないが、

目は口程にモノを言う。
ギラギラと妖しい光を帯びる瞳に、俺は思わず後ずさる。

てゆうか気味が悪い。コイツは俺の何を知っているんだ?不気味だ。イケメンだから更に不気味さが増す。
ついに俺の背中は駅の壁に受け止められ、そんな俺を取り囲むように、男は両手を壁についた。


「…っなんなんだ」
「いいですねぇその目…興奮します…」
「なっ、…なんだ、本当に…」
「ねえ…、加藤くん」
「っ!」


男の右手が、俺の頬に触れる。意識しなくとも、びくっと肩が震え、反射的に彼を睨んだその時。
彼は驚くほど興奮した様子で、俺の目をギンッと見つめた。


「私に例のキメ台詞をお願いします…!」
「…き、キメ台詞…?」
「はい!『縛って吊す』と!」
「は…?それ…?」


はい!と元気の良い返事と笑顔、あと期待に満ちた瞳。

俺はそんなものをキメ台詞にした覚えはない。確かに口癖のように出て来るが。
てゆうか、……これは一体…?

不安と不気味と何かその他もろもろが入り乱れて、頭がごちゃごちゃになってきたが、とりあえず今は言ってしまえば簡単に済むんじゃねーの?なんて思って、どうすればいいかわからないが、とりあえず、口を開いてみた。


「…し、」
「あっ、もっと蔑んだ目で、腕組みして、それで…そうですねぇ、半笑いでお願いします…!」
「え…」
「お願いします、一度だけ…!」


パン、と両手を合わせられ、俺は思わず、


「わ…わかったから!哀願すんな!みんな変な目で見てんだろ!」


押しに負け、男の肩をがくがく揺さぶる。嬉しそうに顔をあげた男は、「本当ですか」と表情を輝かせた。…こうしてれば普通の和風イケメンなのに。


「…一度だけだからな」


そう呟き、俺は足を肩幅に開き腕を組む。すうと息を吸い込んで、顎を少し上に傾け、斜め右下に俺を捉えた。


「……縛って吊す」
「うわあぁ…!いいです、ありがとうございます!いいですそのゴミを見るような目…!」
「………」
「完璧です…!」


目の前できらきらと輝く笑顔に、俺は何も言えないまま、掴まれた両手を解放する方法を考えていた。

その時、右の方から俺の待ち望んでいた声が。


「よー、待たせたな、希里」
「すまない希里、レジが混んでいて」
「希里ちゃーん、おみやげ、コーラだよ」


正直、助かったと思った。スーパーからぞろぞろと荷物を抱えて出て来た会長達に、安堵のため息が漏れる。


「会長たち…」
「お?なんだお前、待たせすぎて浮気しちまったか」
「ちげえよ」
「って…ん?あれ?」
「え?…あ、安形くん、榛葉くん…それに、椿くんじゃないですか」
「司馬じゃねえか」
「司馬先輩、お久しぶりです」
「え?知り合い?」


まさかの展開だ。
顔見知り、いや、それ以上の親しみを醸し出す4人に、ついていけない。会長は楽しそうに笑っているし、安形は右肘で彼の肩を小突いているし、榛葉だってひどく懐かしそうで。俺は4人のど真ん中に突っ立ったまま、動くことも喋ることも出来ずに居た。

すると。


「希里、この方は司馬当麻さん、開盟の先輩で、安形さんたちと同い年だ」
「えっ、ウチの?」
「一度ある事件で関わったきりなんだが、とても良い先輩だ」
「…へえ」


会長のナイスフォローにより、やっと俺も状況把握が出来た。そうか、だから俺の事を知っていたのか。

そう納得した瞬間だった。
俺の右肩に、スッと誰かの腕がまわり、そのまま引き寄せられた。皆が笑顔で交わす会話の合間には似合わない急な出来事。俺は反射的に体勢を立て直し、そしてその手の主を見た。

…司馬だ。


「ところで皆さん、私、加藤くんを頂戴したいのですが」
「は!?」


何言ってんだこいつは!今会ったばかりじゃねえか!
言いたいことがたくさんありすぎて、頭の中で整理しきれない。痺れを切らし、司馬の手を振り払おうと右手を伸ばした瞬間、空いている左手を、思い切り引っ張られ。


「うわっ!?」


俺がたどり着いたのは、安形の腕の中。


「だめだ」
「だめです」
「だめだよ、司馬」


さっきまでの笑顔の消えた会長と安形。宥めるように笑う榛葉さえも。

目が笑っていない、…怖い。


「えー、どうしてですか」
「どうしてもこうしてもねえよ、このすっとこどっこいが」
「そうですよ司馬さん、希里関連の取引は生徒会では承っておりません」
「希里ちゃんをあげちゃったら、安形が言うこと聞かないし…返して?俺の可愛い後輩」


じりじりと睨み合う4人。
ざわざわと騒がしい駅前なはずなのに、雑踏さえも無音に感じる、不思議な空気感。

と。


(…火花が見える…)


改めて大事にされてるんだなぁと言う、謎の安心感。


「そうですか…それは残念です」


3人の殺気に、困ったように笑い両手をあげる司馬。俺は安形に捕らえられたまま、司馬をじっと見つめた。


「貴方達3人がそこまで言うのなら、仕方ありませんね、今日の所は諦めましょう」


なかなか物分かりが良いみたいで、口に手をあてながら司馬は上品に笑う。


「それでは、私は失礼します」
「あぁ、またな」
「またね、司馬」
「お元気で」
「…あ」
「ん?」
「ちなみに私と書いて『邪魔者』と読みます、素敵でしょう?あぁ…ぞくぞくしてきました…」
「もういいからさっさと帰れよ」


ひらひらと手を振り、背を向けた司馬の後ろ姿を見送り、俺達は家路を辿ろうと、彼とは別方向に歩き出した。目指すは安形の家。今日は鍋パーティーだ。榛葉が居るから、味は保証できるだろう。


「加藤くん!」
「え?」


突然背中に投げかけられた声に振り返ったのは、俺だけではなかった。会長を含めた3人も声がする方を振り返る。

そこに居たのは紛れもなく司馬で。急いで追いかけて来たのか、ぜぇぜぇと息を荒くして肩を揺らしている。


「…どうした」
「あはは…私は自分を偽って居ましたね」
「は?」


顔をあげた司馬は、やはりいい笑顔で。


「加藤くんに無理矢理ちょっかいを出して、安形くんや榛葉くん、それに椿くんに責められるのは、間違いなく私にとって…」
「…」
「…快感、です」


きらっ。
そんな効果音が流れそうな瞳の輝きと、咄嗟に掬われた顎、

そして、


「んぅ、…!?」
「「「あぁ―――っ!?」」」


重ねられた、唇。


「…じゃあ、私はこれで」


離された俺は、突然の事に体の力が抜け、ふらっと後ろに倒れる。それを支えるのは榛葉で、目の前には俺達を置いて去る司馬の後ろ姿に噛み付くように叫ぶ会長と安形の姿。


「司馬ぁあああ!締める!お前締める!」
「先輩だからって手加減しませんよぉおお!」
「司馬!希里ちゃんになんてことすんだよ!」
「いいですね、その罵声…!漲ります…!」


あぁ…ややこしいのが増えた。



………‥
司馬当麻。普通に顔が好みです(笑)
敬語イケメン和風
プラス ドM
気になった方は小説版読んでね!きらっ



***



安キリあげる!と言ったらシバキリ持って帰っていいよ!と。

(・∀・)

遠慮?何それおいしいの?
(爆発)


司馬さんGJ!ひたすらGJ!!!!!
安キリに次ぐ新境地にもうにと里の平常心は遥か彼方へFlyaway(爆発)
hshshshshshshshs!
キリたんかわゆす!キリ受け増えろ!

AGTAGT!(あぐちゃんありがとう)





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