何度も何度もキスを交わして、段々と激しくなるそれに導かれる様に、ふたりは触れ合いながら直ぐ傍にあるベッドへなだれ込んでいた。
一段と深さを増した口付けは唾液の湿った音を響かせる。ふたりのくぐもった声がそれに重なり始めると、体のある一点が顕著なまでに熱を孕み、みるみる内に存在を主張していった。


「は……、あ……」
「……だんな、ん、ふ」
「んっ、ぅ……」


舌を絡めながら、本能のままふたりは下腹部を触れ合わせた。布越しに感じる互いの猛りに、腰の動きは淫らさを増していくばかり。
早くもそのもどかしい刺激に耐えられなくなったデイダラは上半身の衣類を乱暴に脱ぎ去ると、サソリの服にも手をかけ、白い素肌を露にさせた。
ぷくりと色付いた突起に誘われて、デイダラは休む間もなく舌を這わせる。サソリの喘ぎ声がその刺激に合わせて溢れだした。


「ひっ……あ、う……」
「旦那……、オイラ、なんか変だ……。うん……」


デイダラはそのまま右手を伸ばし、サソリの性器をも剥き出しにした。
弾けるように飛び出したペニスに直接触れ、蕩けそうなそれに刺激を与える。単調なリズムで上下に扱いていく内に、くちゅくちゅと粘り気のある音が響き始めた。
胸とペニスに与えられる舌の感覚にサソリはただ喘ぐばかり。聞こえる声と淫らな音に、デイダラの体は益々熱を帯びていく。

デイダラは顔を離してサソリの下半身も全て露にすると、そのままサソリの秘められた場所へ指を滑らせた。
左手で睾丸を揉みながら竿を口に含み、先走りがぬるぬると絡む入り口を二本の指で小刻みに撫でる。
そのままゆっくり侵入を試みると、サソリの声が大きなものに変わった。


「んああ……!あ、あ……、あ……」
「旦那、ココ、もっとトロトロにして。アンタの中に、入りたい」
「あ、う、あ……」
「ひとつになろう。そうすればきっとだいじょうぶだ、うん……」


指を差し入れ、デイダラは奥へ奥へと掻き回した。
何が大丈夫なのか、言ったデイダラ本人も分かってはいなかった。
けれど、そんな気がしたのだ。ふたりの痛みを無くせる様な、そんな気が。
根拠のない思惑と共にデイダラの指は動きを増していく。本数を増やし、サソリの腰がビクビクと跳ね上がり始めたところで、デイダラは自身の衣類も全て剥ぎ取った。
デイダラのペニスは蜜に濡れながら天を仰ぎ、間もなく訪れるその瞬間を今か今かと待ちわびている。
それを数回扱き、デイダラは猛りをサソリの蕾へと宛がった。そして彼の名を呼び、顔を見やった。
ゆらりと、ふたりの視線が交わる。サソリは頬を紅潮させながら、とろりとした眼差しでデイダラを見上げていた。見たこともない表情だった。
その瞳にデイダラは欲を駆り立てられる。そしてデイダラは腰を押し進め、ゆっくりサソリへと入り込んだ。


「あっ……!あ、ああぁ……!」
「ん、きつ……」
「ひ……ん、う、あ……」


きつく締め付ける壁に眉をひそめながら、デイダラは根元までをしっかり押し込めた。
サソリを見やれば、同じく苦しげにまぶたを閉じている。涙が滲み、長い睫毛を濡らしているけれど、拒んでいる訳ではない様だった。
デイダラは安堵混じりの息を吐いた。そしてサソリの頬をそっと撫でて涙を拭うと、彼の細い腰をつかみ、緩やかな律動を開始した。


「あ、あっ……!」
「だんな……、……んっ」
「……ふ、は、ああ、あん……」


ゆらゆらと揺らぎながら、ふたりは互いの体温に溺れていった。ぐちゅぐちゅと耳を塞ぎたくなる音がやけに鮮明で、ベッドがキシキシと重みを支える。
汗が滲む。呼吸が激しくなる。繋がった場所から自由を失う。支配されて、捕らわれて、目の前の肌色に自分が壊れる。
けれど、ただ暖かかった。


「だんな、サソリの旦那、アンタはずっと、あんな風に、ひとりで泣いていたのかい?」
「ひ……、あ、う……」


溢れる言葉がこぼれ落ちて、デイダラは上体をも重ね合わせ、サソリの顔の横に肘をついた。


「オイラ、気付かなかったよ。だってアンタはいつだって、その素顔を隠してる……」


一心にサソリを溶かしながらデイダラは思う。
もしかしたら自分は、こんなやり方は、正しい事ではないのかも知れない。
けれど、それならば一体何をしたなら正解であると言うのだろうか。何をしたならこの痛みは消えると言うのだろうか。
もしもこの行為が間違いであるとするなら、自分たちをこんな風に変えた、こんな風に導いたこの時代そのものが既に歪んでいる。
そのせいにするのは簡単で、逃げであるのかも知れないけれど。それでも、少なくともサソリの涙の一因にはそれが確かに影響している様な気がして。
自分の知らない過去のどこかで、彼は悲惨な時代のしわ寄せを受けてしまった様な気がして。
だから彼は傀儡を作ったのだろう。それを操り、戦い、繰り返しながら、彼はきっと時代に奪われてしまったものをずっと求めていた。
まるでピエロだ。笑いながら、笑われながら、その事だけを生業としながら、それでもピエロはたったひとつの願いを涙に印す。


「でも、もうだいじょぶだ。アンタにはオイラがいる。オイラがいるから」
「……デ、ダラ……」
「だって、ずっと一緒だったんだ。これからだって傍に居るよ。傍に居ようよ、うん」


そう言ってデイダラは自分の頬を伝ったものに気付いた。それは涙。サソリを想い、生まれた気持ち。
例え間違っていたとしても、もっと早くサソリの涙に気付いていれば、もっと早くこうしていれば、彼の痛みを拭えていたのかも知れない。
自分にとってサソリは只の相方などではなくて、こんなにも尊くて大切な、言わば唯一無二の存在であったのかも知れない。
デイダラはサソリの右手を絡め取り、彼をぎゅっと抱き締めていた。


「旦那、泣きたい時はここに来て。ひとりぼっちで耐えたりなんかすんなよ、うん」
「……デイ、ダラ」
「オイラはいつだって、アンタをこうやって抱き締めるから」


デイダラは探している。サソリが本当に欲しがっていたものを探している。
涙の理由を、その願いを、手探りで。
赤い色に触れながら、赤い色にゆっくりと、染まりながら。











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