キリは洗面所にいた。
部屋着にしている半ズボンと、余り着なくなったシャツを着て、ビニール製のケープと手袋を身につけている。
その姿はさながらてるてる坊主だ。

鏡の前でキリは薬剤の入った円柱の容器を上下に振った。
キャップをはずすと、体に害のありそうな、つんざくような香りが立ち込める。独特の匂いだ。
櫛の形をしたキャップに付け替え、1度大きく下に振り下ろすと、中身が一気にキャップ側へと移動した。
そしてキャップの先に滲み出るそれを、キリは鏡を見ながら髪の毛の生え際にゆっくりと塗り付けていった。
少し伸びた黒髪は黄色じみた薬剤によって覆われ、次々とその色を無くしていく。
この地道な作業をキリは黙々と続けていった。

するとチャイムの音が鳴った。
鏡を覗き込み、猫背になりかけていたキリは音に反応して背筋を正す。
誰だ、と訝しむと同時に、今度は聞き慣れた声が洗面所まで届いた。


『キリぃ?いんだろぉ?』


安形だ。間延びした彼特有の声を聞き、キリはため息をひとつ吐く。
そして玄関へそっと歩み寄ると、キリが返事をする前に安形はドアノブを捻っており、施錠された玄関に侵入を拒まれていた。


『おれおれー。あなたの愛しの惣司郎ですー。キリちゃん開けてー』


恥ずかしげもなく恥ずかしい事を言ってのけた安形にキリは開ける事を躊躇う。
しかし、このままだともっと恥ずかしい事を扉の向こういるこの男はぶちまけそうで。
再度ため息を吐いて、キリは汚れていない右手で施錠を解き、扉を開いた。


「恥ずかしい事言ってんじゃねーよ」
「間違ってねーだろ?」
「うっぜ」
「つか何?お前毛ぇ染めてたの?」
「まだ染めてねぇ。これはブリーチだ」
「へいへい。お前もちょこちょこ頑張るねぇ」
「何しに来たんだよ」
「お前に会うのに理由がいんの?」
「うっぜ」


真っ直ぐな安形の視線と言葉に赤く染まりそうになる頬。
キリはそれをごまかすように安形に背を向け、洗面所へ歩みを戻した。
安形は靴を脱いで玄関に施錠を施すと、キリの後に続き、洗面所の前でせわしなく両手を動かすキリを黙って見つめた。


「すっげー匂いだな」
「薬剤だからな」
「頭皮平気かぁ?やり過ぎたら禿げんじゃねーの?」
「そこは気合いだ」
「気合いかよ」


他愛もない会話をしたところでキリは手を止め、キャップを外して中身を排水溝へ流した。
そして洗面台に緩く手をつき、無言で立ち尽くす。
ゆったりとした沈黙の中、薬品の匂いは依然として空間に存在し、それらに耐え切れなくなった安形は再度口を開いた。


「……何してんの?」
「待ってんだよ」
「何を?」
「色抜けんの」
「どんくらいかかんの?」
「10分とかだな」
「そんなに?お前良く耐えられんね」
「もう慣れた」


さらさらと流れていく会話に中身は存在しない。
再び訪れた沈黙にもう一度安形が口を開くことはなかった。
その代わりに、彼はキリの後ろ姿を見据えていた。
ケープを纏っているせいでしっかりとした肩の輪郭がぼやけ、何となく華奢であるような、ふわふわと柔らかそうな印象を受ける。
彼の内面にある年相応の幼さが感じられるようで、安形はくすりと小さく笑った。

すると少しもしない内に、キリは鏡に写る安形が自分を見つめている事に気が付いた。
キリが訝しげに後ろを振り返ると、ケープが空気を含んでふわりと揺れる。
幼い見目。安形はえも言われぬ愛しさを感じて、再度柔らかに微笑んだ。


「……何笑ってんだよ」
「いや、可愛いなと思って」
「あっそ。きめぇな」
「へいへい。すみませんね」


表情ひとつ変えずにキリは暴言を吐き、また鏡へと向き合った。
ただ、それに蔑みの意などは含まれていない。
キリは口が悪い。彼にとってのうざい、きもい、は日常の中に自然と溶けている、いわば口癖であると言えるものなのだ。
勿論安形もその事は十分に承知している。そのため、彼もキリの言葉には慣れた様子で相槌を打つ。

そのままふたりの間にはしばらく無言の時間が流れた。
鼻についていた匂いは時間によってすっかりと定着し、違和感をなくしている。

そして静寂がキリのそろそろか、という呟きによって小さく裂かれた。
安形が反応するより先にキリはゆったりとした所作で蛇口を捻り、湯気を纏って流れ出すお湯に腰を曲げて頭を突っ込んだ。
そしてそのまま髪についた脱色剤を洗い流すため、無造作な洗髪を始めた。


「豪快ですねぇ」
「繊細にする必要もねーだろ」
「まあそれもそうだな」
「あ、やべ」
「ん?」
「安形悪ぃ、シャンプー取ってくんね?」
「おっちょこちょいか」


キリの少し間の抜けた行動に安形は小さく微笑むと、言われるがまま歩幅2歩分の距離にある風呂場に赴き、シャンプーを手にした。


「悪ぃな」
「……」
「安形?」


しかし安形はシャンプーをキリに手渡す事はしなかった。
手にしたそれと、宙をさ迷うキリの右手を交互に見つめ、そして。


「うおっ!?」
「キリぃ、お兄ちゃんが洗ってやるよ」
「ちょ、誰がお兄ちゃんだ!きめぇ!離せ!」
「やーだね。おらおら、大人しくしねぇと洗面所汚れっぞ」
「の、野郎……!」
「痒いとこないですかー?」
「覚えてろよ……!」





***





ここで飽きた/(^O^)\

いや、あのね、キリたんが自分でちまちま髪染めてたらクッソ可愛いなとか思ってね、
それを安形に見られーの頭シャンプーされてからのアッー!のつもりだったのだけどね、
銀髪ってブリーチしてからカラーリングじゃんよ、
なんかそれまで書くのめんどくなってよ、
そんでダラダラしてたらこのネタに飽きちまったwww


なんかめんごw
とりあえずこの続きは皆さんの脳内ですwwww
頑張ってキリたん喘がせといて下さいwwwwwwwwwww





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