キリは時折、笑う。
綺麗に、柔らかく。

僕は聞く。どうした、と。
キリは答える。好きです、と。
そして僕は決まって、僕もだ、と、微笑みながら髪を撫でてやるのだ。少し高い位置にある銀色を。
キリは目を細めて、笑う。
嬉しそうに、悲しそうに、笑う。
そんなキリを抱きしめて、僕等は互いの鼓動を聞く。
生きている証。肩越しにひらりと散る枯れ葉とは違う。
僕等は生きている。

キリは時折、泣く。
静かに、音もなく。

僕はそれを拾う。指先で、舌先で。
キリは囁く。貴方に出会えて、俺は救われた。それがとても嬉しくて、嬉しくて。
ありがとうございます。見捨てないでくれて、ありがとうございます。
弱々しく零して、弱々しくしがみついて。
悲しそうに、嬉しそうに、泣く。
僕はひたすら撫でる。柔らかいキリの髪を、ひたすら。

そして聞く。
それは散りゆく枯れ葉の音響ではない。

そして拾う。
それは散りゆく枯れ葉の葉片ではない。

キリの声を。キリの心を。

僕は聞いた。
キリの声を聞いた。
助けて欲しい、と、素直に言えずに涙を流していたキリの声を。
この耳で確かに聞いたんだ。

僕は拾った。
キリの心を拾った。
助けて欲しい、と、素直に言えずに投げ捨てられたキリの心を。
この手で確かに拾ったんだ。

だからもう、悲しまなくていいんだよ。キリはひとりぼっちではないのだから。
僕がキリを抱きしめるから。静かに朽ちて、ひっそりと大地の一部になど、ならなくていい。
まだ早い。その時ではない。
キリは大地に立ったまま、笑えばいい。そして時折、泣けばいい。
すべて聞くから。すべて拾うから。この耳で。この手で。これまでも、これからも。大地ではない、僕が。


枯れ葉散る寒空の下。掠める風が冬を知らせる。
そしてキリの鼓動に触れる度、僕は思うのだ。
この不器用で優しい子が北風に揺れ、冷たい大地へ散らずに良かったと。
見捨てないで良かったと。

キリを強く抱きしめて、柔らかな髪に指を絡ませて、そっと。





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