デレキリたんを突き詰めてみた


何の変哲もない休日。
何の変哲もない俺の部屋。
何の変哲もない俺。
何の変哲も……ある、キリ。


「……キリ?」
「ん?」
「いや……、どした?」
「あ?なにが?」
「や、……何でもねぇ」


俺の部屋に当たり前のようにあるベッドに、当たり前のように寄り掛かって、そんでまた当たり前のようにまったりしているだけなんだけど、当たり前じゃねーんだよ、左側が。
左腕がキリの右腕に自由を奪われていて、肩にはほんの少しの重みを感じている。
左側にハンパじゃねーくらいキリを感じていて、言葉に詰まっちまった。

まあ簡単に言うとだな、キリがぴったり俺にくっついているんだ。

まったりするなんて事はよくある。むしろ俺の部屋でする事といったらまったりする事とセックスくれーなもんだ。
あ、いや、この言い方だと語弊があんな。割合な、割合。まったりすんのとセックスすんのが圧倒的な割合を占めてるって事だ。
だからまったりしてる事自体おかしな事じゃねーんだけど、いつもは拳みっつ分くらいの距離が存在してんだよ。俺とキリとの間には。
空と君との間には今日も冷たい雨が降るけどな、なんつって。かっかっか。ゴホン。逸れたな。
あのな、キリは人一倍意地っ張りで、ツンデレって言葉がこれまた人一倍よく似合う人間だから、まあそこもまた可愛いからいんだけど、つまり素直に甘えられない照れ屋さんだから絶対いつも拳みっつの距離をつくっちゃうって訳なのよ。
そんでいつも俺がその距離を詰める度に、来んじゃねー、寄んじゃねー、なんて罵声を当たり前のように浴びせてくれる。
まあ本気じゃねーって顔見りゃ分かっから本当に可愛いくってしょうがねーんだけど。

そんなキリが、だ。
何故か今日は俺にぴったりとくっついてる訳で。

何か変なもんでも食ったんじゃねーかとか、何かチュウさんのおかしな薬とか飲んじゃったんじゃねーかとか、俺の胸中は次から次へと疑心で溢れかえっちゃってる訳で。
いや可愛いよ?可愛いから俺的には何も問題ねーんだけど、やっぱ気にはなるっしょ。
俺と腕組んで俺にもたれ掛かって、まったりしちゃってるキリちゃん。

あなた一体どうしたの?


「……あがた」
「あん?」
「……」
「キリ?」
「……そぉじろー」
「…………なぁに?キリちゃん」
「……」


急に聞こえたのは何となく甘さを感じる声とそれに続いた中身のない会話。一体どうしちまったんだろう。
間延びした声に合わせて返事をしても、キリはだんまり。ほんと意味分かんねー。

だけど正直ずっきゅん来ちゃったよね。
だって急に名前呼ぶとかさ。あ、名前って下の名前な、惣司郎って完全名前負けしちゃってる感たっぷりの俺の名前。
それを甘ったれた声で呼んじゃうとかさ、可愛い過ぎるって。


「キーリ?どした?お前?」


だからとりあえず髪の毛に音をたててキスしてやると、キリは頬染めて甘えたようにこっちを見つめてきた。
やっべ何だコイツすっげ可愛い。なんか普通に可愛い過ぎるからとりあえずいただきますっつー事で、薄い唇にそっと自分のそれを合わせてみたらまさかまさかの無抵抗。え?マジで何?
おいおい。あなたいつも急にちゅーなんてしたら鉄拳飛ばしてくるじゃないの。
俺の(一応)イケメンフェイスに綺麗に拳めり込ませてくれるじゃないの。


「……ん」
「……キリ……」
「ふ、ぁ……そ、じろ……」


まぁ調子乗って舌とか入れちゃう俺も俺だけどさ。
そんでキスの合間に名前呼ぶとか呼ばれちゃうとか、何このめっちゃ恋人っぽい雰囲気。甘ったる過ぎて禿げちゃうって。
イケメンフェイス、禿げ散らかる。嫌過ぎでしょ。本気勘弁して下さいよ。


「……ん、ん」
「……」


だがしかし、これは髪の毛どうのこうの言ってる場合じゃねーってな。
だってめっちゃ可愛いんだもん。目ぇ閉じてキスに夢中になってるキリのうっとりした顔。いやキリはいつも可愛いんだけどな。
つーかこっそり盗み見ちゃってるとか俺も悪趣味だよなとか思ったけどこれはある意味いい趣味してると言えるよね俺。
ちげーな、ある意味じゃなくていい趣味してるな。だってキリ可愛いもん。うん。


「……ベッド乗るか?」
「……ん」


まぁそんなこんなであれよあれよと結局いつものお決まりコース。
そうです通称メイクラブ。古くせーとか言わない。いくら老けて見えようが俺は平成生まれだっつーの。
そんで一足先にベッドに座って未だ足元にいるキリに左手を差し出すと、キリはその手をじっと見つめて、そっから視線を右に移して、そんで体を移動させた。


「……え?」


ベッドじゃなくて、俺の股の間に。つまり股間。
キリちゃん?そこは俺のベッドじゃないですよ?俺の息子の寝床だからね?

頭真っ白。本気でコイツ意味分かんねー。そんでコイツまさかなんて思ったけど案の定。
キリちゃん息子にちゅーしちゃったよ。まあ布越しなんですけどね、かっかっか。って笑えねーけどな。


「キリ!?おま、ちょっ……」
「そうじろ……」
「待て待て待て待て!」


そんで当たり前みたいにベルト外してチャック降ろそうとするもんだから流石に俺も焦っちゃったよ。
だって普段フェラして欲しいな、てへっ、って冗談混じりに可愛く言っても、あ?何言ってんだてめぇマジきめぇな吊すぞコラとかしか言わないのに。
まあキリがしこたま機嫌良い時はしてくれちゃったりもするんだけど。
そんな子がよ?そんなキリちゃんがよ?
何で急にフェラしてくれようとしちゃってんの?
そんで何で右手掴んで止めさせたらこんな寂しそうな顔で見上げてくるの?
マジで意味分かんないっしょ。


「キリ?おま、ほんとどうした?何か今日変じゃね?」
「……」
「何かあったか?ほら、言ってみ?」


極力優しく声かけて、キリを見つめる。うるうる。俺を見上げる瞳には涙が若干浮かんでて。
可愛いなぁなんて思う反面、やっぱ不安。
キリが涙見せるなんて俺の息子が頑張っちゃってる時くらいなもんだから。あらやだお下品スマン。


「……んか、なかったら」
「ん?」


そしたらぼそっとキリが呟いた。見上げていた視線を下に移動させて俯いてる。
本気やべーんじゃねーか何て思ったが、キリはまた直ぐに顔をあげて口を開いた。


「……キリ?」
「何か、無かったら、お前に、甘えちゃいけねーのかよっ……」
「……え……」


ずっきゅん。

何かきたよ。つーかこれお決まりの展開じゃね?
頬をピンクに染めて、眉毛ちょっとだけ下げて、はにかんだような、ちょっと泣いちゃいそうな、ああもうめんどい。説明すんのマジめんどい。
とりあえずすっげぇたぎる顔ですっげぇたぎる事言ってくれちゃったって事。
マジで何これ。ずっきゅんずっきゅんときめいちゃって何だか胸が苦しいよ?
ああもう駄目だ、駄目。禿げる。禿げ散らかる。明日にゃ頭ツルッツルだ。トゥルットゥル。

つまりだ。
ただキリは甘えてたってだけだったんだ。
普段が普段だから妙に警戒しちまってたけど、キリだって四六時中ツンツンしてるわけじゃねーしな。
まあ何でか今日はデレデレな気分だったって事だろう。
よくよく見たら惣司郎大好きって顔に思いっきり書いてあるし。後なんか寂しいって。
ミチルによると俺は人の心理を読む術を持ってるらしいから結構これ確実。
じゃあ最初から読んどけよとか言わないでくれよな。そしたらこれ5行で終っちまうって。とりあえず説明乙。


「……そんだけか?」
「……」
「そんだけじゃねーだろ?」
「そぉじろ、は」
「ん?」
「……俺に、されるの、いや……なのか?」
「え……?」
「……いやなら、しねぇよ」
「嫌じゃないです嫌とかマジ何語か分かんないですとりあえず全力でお願いします」


必死な俺マジで乙。
でも今のキリの顔、冗談抜きで世界終わりそうだった。捨てられた子犬みてーな。あ?表現ありきたり?うるせーよ。
とにかくだな、可愛くて可愛くて愛くるしくて愛おしい恋人によ、そんな切なげな顔されて息子さんを僕に下さいなんて言われたらもうあげちゃうしかなくね?
据え膳食わさぬは男の恥ってな。あ?若干違う?いんだよそんなんはテキトーで。


「……ん……」


なーんてバカな事を考えてる間にゆっくりチャック降ろされてパンツの上からまたまた布越しにちゅーされて、これまたゆっくりと息子を引きずり出された。きゃっ!恥ずかしい!スマンきもいな。

寝起きで覚醒しきってない息子はデロンデロンだ。デロンデロン。
そんな息子を両手で抱き上げて、キリは目ぇ閉じて先端にちゅーしてくれた。
ちゅーと言うよりちゅって感じだったがどっちでもいっか。
愛おしむみたいにのんびりゆったり何度か繰り返しちゅっちゅしてくれるキリはやっぱり本気で可愛い。禿げる。
ただ問題なのは俺の毛根じゃなくて俺の息子。せっかくキリがおはようのちゅーをしてくれてるってのに起きる気配が全くねぇ。
デロンデロン。息子は未だにデロンデロン。だらしねぇ、しまりねぇ。全く誰に似たんだか。あ、俺か。


「そぉ……じろ……」
「ん?」
「卒業、寂しいよ……」
「えっ……?」
「んっ……」


キリは言うや否や先端パクッてしゃぶっちゃって、俺も息子もびっくり仰天。

え?何コイツ?ありきたりに卒業寂しいとか思っちゃったりとかしてたの?え?何?そういう事?


「……可愛い」


あ、今92%くらいの割合で勘違いした奴いんな。一応説明しとくけど今呟いたのはキリだからね。
多分一気に目ぇ覚ました息子に満足したんだろうけど、もう本当、可愛いのはおめーだっつーの。


「キリ……」
「……ん?」
「変わんねーよ」
「え……?」
「卒業したってな、何も変わんねぇよ。当たり前の日常があるだけだ」
「……」
「休みの日にはこの部屋にお前がいて、俺がいて」

「んでまったりしてっか、セックスしてっかだろ。これからも、ずっと。ずーっと」

「何も変わんねーから。お前が俺の事好きでいてくれる間は」


コイツなりに色々不安だったんだなって思ったらもう可愛いくってしょーがなくて。
俺なりに不安取り除けるように優しく優しく声かけた。

伝わりゃいいな。
不安に思う事なんか何にもねーんだよって事。だって俺、ドン引いちゃうくらいキリにゾッコンだもん。
普段の激しいバイオレントなツンも、今みたいにあんまーいかんわいいデレも、どっちもたまんねぇ。どっちもめっちゃ好きだから。

だから、寂しそうな顔すんな。
いくら環境が変わろうが、俺はキリの事愛してっから。それは変わんねーから。
分かるだろ?


「……そう、じろ……」
「会いたくなったらいつでも来いよ。今までみたいに。寂しくて動けねーなら、俺が全力で会いに行くから」
「……」
「な?」
「…………うん……」


うわ、可愛い。
今の顔、ほんと可愛いかった。頬染めて嬉しそうに、ニコって。ニコって!
普段あんまり見られないキリの笑顔。
それが今、顔に書いてあった寂しいって文字が無くなって、惣司郎大好きって言葉と共に俺に向けられた。

ヤバイって。何なんだよマジでもう。今日のキリ可愛い過ぎるって。
ああもう駄目だ。俺超愛されてる。こんな可愛い子に愛されて俺も息子も大喜びだよ。
嬉しそうに微笑みながらまたまたちゅっちゅ始めたキリに息子はもう大歓喜。ピンピンしてます。ピンピンと。
不器用に一所懸命に唇から喉の奥までそんで時折舌を使って俺と息子を愛してくれるキリ。本当に可愛い。本当に愛おしい。

あーもう駄目だ。これイクわ。後3分もしたらイッちゃうわ。早漏乙とかうるせー。


「キリ、も、いい」
「んっ?」
「こっち来い。お前と一緒にイきてぇから」


でも折角なら、やっぱひとつになってイきてぇもんだね。
だってこんな可愛いキリを俺が可愛がらなくってどーするよ?愛さなくってどーするよ?



つーわけで、18禁になる前にここで幕引き。おしまいな。
続きはまた後日。需要あったら教えてやるよ。なんつって。

じゃあな。





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