chloe







切ない系2



▽少年の憂鬱
▽君不全
▽一生片思い
▽盲人は知った
▽許して何ていえないけど












▽少年の憂鬱
オレはアホやから、って諦めたような振りして、でもホントはいやでいやで仕方なくて、反省だってするけど繰り返してしまうから、もっと虚しくて悲しくて情けなくて、こんな自分ならいないほうがいいって本気で思ってる
思っていたって、いなくなる方法なんて大して思いつかなくて、仕方ないから避けてみたり、タヒんでみたくなったり、知られたりしたらきっと悲しませるような終わりを考えたりしかできない
これは悲しんでくれる前提を無意識に立ててるってのが笑えるところで、要はオレのことを考えていっぱいいっぱいになってる顔が好きで、だから困らせてばかり悲しませてばかり怒らせてばかりいる
でもどうせなら楽しい嬉しい幸せだって思っていてほしい、オレなんていうダサくてみっともない人間を傍において、それでも明るく笑んでいてほしい
あなたが好きだ
どれほど繰り返しても、一度として音にはならなかったけど




▽君不全
謙也さんはアホや
『ええよ』
嫌なら嫌だと言えばいいのに、怒ればいいのに、唇噛んで俯いて首を振ればいいだけなのにそれをしない
泣きたいくせに、口角引き上げて、揺れる眼球に蓋していつも許容ラインを広げていく
あんたがそうやってオレをつけあがらせるから、大人ぶって余裕ぶって嘘をつくから、その嘘をはぎ取りたくて無理を言う
悪循環と云うのかもしれないけど悪いのはオレじゃなかった
『光が笑ってくれるなら、何もいらんよ』
また、また、何度でも自分の首を絞めたがるから、嘘は嫌いだと言ってあげる
「謙也くんなんて嫌いや」
泣けばいいのに、苦しめばいいのに、それで我慢なんてやめればいいのに
オレの中で我儘言って縋りついて欲しがって喚いてくれるまで、
「笑ってあげるから*んできて」
優しくなんてしてやらない

「できるやろ?謙也くん」




▽一生片思い
死んだ人には勝てないなんてよく聞くけど、勝ち逃げするために自殺宣言してるオレって何なんだろうって、フェンス越しに歪められたあんたの顔見てようやく背筋に寒気が走った
「財前、」
負けだ
完全なる敗北だ
「謙也さんのこと、お願いします」
彼の手を取るのを託して、舞台を共有することを恐れて
「財前!」
心臓の浮く感覚に全身に冷や汗が湧く
数秒後のオレはきっとすごく汚いけど、そんなのは今更だった
ただできるなら、謙也さんには見てほしくない
あなたから逃げた、こんな汚いオレを
「ごめんなさい、謙也さん」
一生愛される自信がなかったの




▽盲人は知った
「財前クンやったか?」
黒が光に透けて藍色に見える髪の男が言った
彼は怒っているのか悲しんでいるのか、憎んでいるのか、オレを冷めた目で見据えている
「せやったら何ですの?」
愛想はないし、恨み嫉みも買いやすい自身のことはわかっているが、この男とは初対面のはずだ
わざわざオレに名前確認しなければ誰かもわからないほど全くの他人に、不機嫌ぶつけられるいわれはない
「返してくれへん?」
「……」
「謙也の目、返してや」




▽許して何ていえないけど
「すまんけど、帰ってもらえるか」
そう言われて病室を出された
顔を見ることもできなかった、オレが傷つけてしまった人
呆然と、閉まった白いドアの前に立ちすくむ
どれだけそうしてただろう
長いのか短いのかわからない
病室から出てきたのは、さっきオレを締め出した彼の連れで、
「もうあいつに近づかんといてや」
と苦々しく吐き出した
「自分がおったら、あいつはまた辛い思いする」
そうして傷つけて、修復が効かなくなって、隔離された病室から出れなくさせた
彼に許されようだなんて、思わない
思わないけれど謝りたかった
謝って、もう怯えなくていいと伝えたかった
「一目でええんです。あの人に謝りたい、お願いします」
もう傷つけたりしないと約束したかった
「アホ吐かしなや」
ぴしゃりと遮る人は冷たい眼をしていた
視線や意思で人が死ぬなら、オレは数十回と死んでいただろう
「許してもらおうなんて思うてません?吐かしなや。なら何のために謝ろう思てん。えらい自己満足やな。謝って自分に免罪符でも立てたいんか。あいつがどんな奴かもうわかってんやろ?人の心無下になんか絶対しよらん。そんなんが頭何ぞ下げられたら、許さんはずないやろ。アレはきっと許す。自分は頭下げて、許してもろてすっきりかもしれんけどな、アレはそれからだって一生、自分につけられた傷と生きてかなならんのや。どうしたってもう戻らん。一生痛い辛い思い抱えて、ああ許しなんてせなければよかった思ったって、自分に何を望める?嫌な記憶だけ戻るきっかけ増やすだけや。言い訳なんぞ立たせてやらんわ。一生わだかまり抱えて生きればええ」
彼と同じ青い眼が暗く笑う
「第一、自分なんかが近づいたらショックで今度こそ死んでまう」


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