chloe







CPなし2



▽秘密の話
▽花一匁
▽金属バット











▽秘密の話
帰りの会のあいさつが終わるのをオレは今か今かと待っていた
さようならを高速ですませ、二つとなりの教室へ急ぐ
先生が走るなと言ったけど、その時にはもう走る意味はなく、さっきすませたさようならが、この教室から聞こえるのを待った
(はやく、はやく)
一番に教室を出たオレを、後から来たやつらが「またな」と言って追いこしていく
一人二人、三四五、となりの教室からも二四六
廊下も教室もざわざわしてるのに、目の前の教室だけは静かだった
「謙也帰ったんちゃうんか」
「ほら、侑士やろ」
ニヤニヤするクラスメイトにうっさいわと返して、ふざけているとようやっと侑士のクラスが帰りの会を終えたらしく、戸が開いた
出てくる子たちを避けて、教科書しまう侑士の席まで真っすぐ向かった
「もう、遅いわ!」
「そんなんしゃーないやろ」
「せやけど、むっちゃ待ったっちゅーはなしや」
「待たんと帰ればええやん」
「冷たいやっちゃな」
「何言うてん」
教科書を高さ順にしまう侑士はしれっとして本間に冷たい
けれど、今日オレはビッグニュースを知らせなければならない使命感に燃えていて、そのために一番に教室を出て侑士を待っていたのだ
早く話しだしたい気持ちがいっぱいで、でもここで話すわけにはいかなくて、早く帰りたくてそわそわしてしまう
ランドセルを背負った侑士が「帰んで」と歩きだすのを追って教室を出る
オレはうちに帰らないで侑士ん家に行くのが常だし、下校は大体一緒だ
おんなじ学校のやつらが少なくなってきた道で今までこらえてたビッグニュースを耳打ちした
「あんな、オレのクラスの田中まいこっておるやん」
「おん」
「侑士のことかっこええなって」
昼休みに聞いてしまった女子の恋ばなというものに、このいとこの名前があったことにオレはいてもたってもいられなかった
早く知らせたいと思っても、うわさになってしまったらかわいそうだと思うと学校では言えずに、ついに今知らせることができたというのに、侑士の反応のないことこの上ない
「さよか」
「なあ、うれしないん?」
「べつに」
「なんやそれ」
クールぶってる侑士にタックルかましてやると、逆に捕まってしまうし、ランドセルが邪魔で逃げられない
「放せぇ」
「なんや、ギブアップか」
「誰がやねん」
そのままもつれたまま帰ると、おばちゃんと先に帰ってた翔太に笑われた




▽花一匁
古い革張りのソファに腰掛け、さっき届いたばかりの書面に目を通す白石がケラケラと笑う
千歳が持ってきたマドレーヌを飲み込みながら白石の手元を覗き込む
「また謙也指名されとる」
「八連なんて新記録達成やな」
「まあ、そんなユウジも三連やで」
「げえ」
顔を歪めてみせると、白石はまたおかしそうに笑う
オレたちは今のところ無敗で上がってきている
何度挑まれようと花を落としたことはないし、この先に落とす予定もない
花数五十を越す花籠としては、神尾に近いとされる最有力の一つだ
「んで、ご指名はどちらからいただけたんかなー」
「不動峰や」
「ほー」
最近伸びてきたダークホース
「あ?なら何で謙也指名されてん?あっちにはもうリズムくんがおるやろ」
「さあ?なんでやろな」
マドレーヌを口に放りながら楽しそうに口角をあげた
――――――――
オリジナルで考えてたヤツをリサイクル
たぶんユウジが主人公




▽金属バット
かららら
かららら
軽く金属が擦れる音がする
また慈朗がガラクタでも引っ張って来たのだろう
音は案の定この部屋の前で止まった
しかしその戸はなかなか開かれず、さては大きなもので手が空いてないなんてことはあるまい、と不信が湧く
手がいっぱいなら声を上げて、こちらから開かせるのが彼のやり方だ
どうしたのだろうと、腰を上げるのと同じタイミングで戸が開いた
「…!?」
「……………ゆうし」
金髪で緩く笑んだその顔は記憶の中よりも蒼白く、血の気がない
いや、それよりも
「なんでココにおるんや、……謙也」
大阪にいるはずの謙也がなぜココにいるのか?なぜココに来られたのか?
「なんで?」
きょとんとした顔で首をかしげ、かららら、からららと右手に握った金属バットを鳴らして近づいてくる
コの字型のデスクに背を取られ、避けようもなく正面に対峙する
謙也らしからぬ笑みを携えて、
「迎えに来た」
バットはデスクを陥没させる
「侑士が遅いから」
遠くで爆発音がした


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