chloe







忍び足



軽い説明
忍足は忍びの里長で孤児とか適当な子拾って忍びにしちゃう
宗也さんに拾われ養育され、時期当主の謙也さんに可愛がられる光くん
忍足の分家というか傘下の小石川の健二郎に目下片思い中の謙也さんに片思い中の光くん
てな感じで始めてしまった忍び足(シノビタリ)
健←謙←光

▽一方通行(会話文)
▽ソレが世界
▽面影は遠く











▽一方通行
「謙也さん、オレが勝ったら、小石川さんのこと諦めてください」
「なん?またその話かいな」
「ええ加減示しがつきませんやろ、時期当主がそんなんじゃ」
「やから、さっさと健二郎が落ちてくれたらええんに」
「そう、いう、問題とちゃいます」
「オレの器量の問題やろ?」
「〜っ、あんたは!嫁貰って、跡取り、を!」
「………」
「―ッ!」
「光、オレの勝ちや」

********

「健二郎!」
「ぉわ、謙也!?」
「もう鈍いで?こんな簡単に背後取られてたらまだまだやんなー」
「謙也には適わんて」
「ふへへ、あんな、さっき光とヤッてんけど、あいつまた腕上げてん!頼もしいやっちゃ」
「ほお、謙也が言うんやから相当なんやろな」
「まあ、オレのがまだまだ上手やけどな」
「オレも一回付き合うて貰おうかな」
「おお!そんな!オレを巡って争わんといてー!」
「はいはい」
「まったくつれへんな」
「そんなことないやろ?」
「う"ぅ、そんな!頭撫でられたって、子供やないんやからな!」
「知っとるよ」
「………健二郎、すき、むっちゃ好き」




▽ソレが世界
息切れがひどい
もう随分と走っている
彼の背を見失わないでいるのがやっとだ
俺の足はこんなに重かっただろうか
「ッ……はぁ、はあ、」
意識を宙に漂わせた間に見失った
昼間だというのに山の蔭は濃くて、木々の犇めきに離された距離がどれほどかも測れない
ざわざわと山が鳴く中に、彼の足音も息遣いもわからない
オレの熱くなった肺のひぃひぃいうのがいやに大きく聞こえる
さて、それよりはぐれた今、どうすべきか
一度里に下りるべきだが、忍び修行の山だ
下手に動けばえげつないトラップが待ってる
何より一度止めた足が棒のように動かない
なんてざまだろう
首領に拾っていただいて、こんな走るだけのこと一つこなせないなんて
「情けな…」
「光」
座り込んだ頭上から声が降ってきた
気配なんて感じなかった
「休んでないで立ち」
「…はい」
毒でも回ってるような気さえする重い足に、再び力を込めようとするが、ぞっとするほどに動かない
「はよしぃ」
彼の少し苛立った声が上から降ってくる
「…動かん」
本当に情けない声が出た
馬鹿らしい話だが、足だけ死んでしまったような恐怖が湧いて出て、オレは助けを求めている
「立ちぃ」
けれど、彼の声に含まれていたのは苛立ちだけのようだった
背を預けた木の上から、「立て」とだけ宣って、オレを見下ろしている
「光、立ち」
「立てへんかったら死ぬだけや」




▽面影は遠く
随分、磨がれた眼をするようになった
忍びの里長の家に生まれ、類い稀なる身体能力を持ち、才に秀でた子どもだった
誰もが期待と羨望を向けるに相応しいと思っていたが、彼、謙也は優しすぎると、皆が危惧していた
けれど、今の謙也はどうだろう
刄の切っ先になんの情けもなく、陰に潜む眼はなんの感情もない
『オレ、怖いねん』
いつか聞いた幼い声が頭に居座る
『なんも考えんでも忍務、できるようなってまうんが、怖い』
震える手を重ねて握ってやった
磨ぎ終えたくないを落とさないように強く握った
戸惑い、恐れ、不安、揺れていた瞳が懐かしい
すっかり変わってしまった眼光の鋭さを、オレは喜ぶべきなのだろうか
「謙也」
「………健二郎」
「財前は大丈夫や」
「急ごう」


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