chloe







CPなし



▽超能力
▽カメリア











▽超能力
オレはときどき超能力が使えるらしい
光がそう言っていた
オレ自身のことなのにさっぱり他人事なのは、自分でソレを見たことがないから仕方ないのだ
「スプーン曲げたりできとるん?」
「できません」
「じゃあ空飛ぶとか?」
「それもできないんじゃないっすか」
超能力と言われても思いつくのなんてスプーン曲げと空中浮遊くらいで、ソレを否定されたら自分がどんな超能力を持っているかなんてわからない
「なあ、オレ何ができるん?」
光は何も答えず紙パックのジュースを音を立てて飲みきった
***
そういう夢を見た
転がるテニスボールと突き抜けた空
「謙也!」
「大丈夫か謙也!?」
秋空は高く雲が薄く長い
「…ぁ、れ?」
「怪我してないか?具合悪いんか?」
「いや、なんとも、転んだだけや、たぶん」
「いきなし倒れるからびびったわ、どアホ!」
健二郎が引き上げてくれて、白石にどつかれる
「ボール踏ん付けたんやろ?足元注意せなあかんで。謙也はただでさえバランス悪いんに足首緩なったらもっとやぞ」
転がったボールと白石の言葉に自分がどうなったのかを知った
打ち付けた頭が痛んで、きっと白石の言ったとおりなんだと納得する
あの一瞬で見た夢で隣にいた彼はこちらを眉を顰めて見ていた
眉間に刻まれた皺が最近いつもあるような気がする
「謙也さん、今」
「皺寄せてばっかりやと残るで」
「………」
「そや、明日の昼は屋上な!秋晴れは気持ちええで」
夢で見た屋上からの景色を思い出して提案すれば、光は頷いて練習に戻っていった




▽カメリア
 医者であった父はドイツで出会った日本人の母と結婚した。二人の間に生まれたオレは、母方の古い血の隔世遺伝なのか、色素欠乏なのかはわからなかったけれど青い目をしている。それを周囲は母が不義の子を生んだと言い立てた。父は母のこともオレのことも信じ愛してくれたけれど、青い目はそれだけでオレたち家族を掻き回した。
 弟が生まれ、首が座り、オレが三歳に成る年、両親の母国へ移り住むこととなる。オレにとって初めての外国、日本。日本は白い国だった。日本に移り住むようになって十余年、目にした色は白ばかりが膨張していくまま。部屋の壁も天井もカーテンも人も、みんな白い。
 三歳を迎えるほんの少し前からオレは体調が芳しくなく、慣れない土地柄のせいだろうとか、旅疲れが抜けないのだろうと言われていた冬の日にひどい熱を出した。熱は三日三晩引かず、抗う体力もないままに生死さえさまよったという。一度は落ち着いた熱も一週間のうちに何度もぶり返す。回数を重ねるたびに重くなっていく症状に、行われた検査の結果はオレと世界を隔てる形となった。
 遺伝子疾患により免疫力が著しく低く、感染しやすければ治りも遅い、そんな体だった。目の色もおそらくメラニン色素の欠損があったため。
 それからは日常生活も制限がきつく、人の出入りの少ない奥まった部屋にいることが多くなった。学校へは行けず、家庭教師に来てもらうようになって長い。弟の翔太から外の話を聞くたびに、羨ましさが募り景色を思い描く。けれど、どうしても色彩だけはうまく乗せられず、ぎこちなく崩れていってしまうのだった。盲目なわけではないので色は知っているはずなのに、窓から見える木は緑をしていると知っているはずなのに、閉じた目蓋の裏は色を欠いていた。
 なんでもない季節が幾重も過ぎ、オレが十三になる年、家の裏手側の洋館に華族が越してきた。裏といってもずいぶんな距離があって、向こうの様子は窺えない。聞いた話では生まれ年がオレと同じという息子がいるらしい。人様の家を覗く趣味はなかったが、窓越しにでもどんな人か窺えたらいいのにと思った。
「そんな窓に寄っといたら体冷えてまうで。」
「平気やって。」
 陶磁のように白い肌、白金の髪色、紅茶のような目、オレの目と同じように色素の欠けた身体。それ、白石はソファに投げてあったブランケットを肩に掛けてきながら、同じように外を見た。ガラス窓に薄く映りこむ彼を見る。
 外見で言うならば、白石のほうがよほど日本人離れしていて、白すぎる肌は病弱に見えた。しかし現実は健康そのものだし、驚くほど整った顔は日本人離れした髪も目も相まって、若い年頃の女の子に王子様の様だと人気を博している。それを父からの頼みで、オレに会いに来るのに時間を割いて、女の子の誘いは断っていると聞いた。嬉しいような羨ましいような、憎らしい、ような。お門違いも甚だしい。


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