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久しぶりです
2012/10/04 01:50


『西で土佐衛門があがったらしい』
『近頃見ないと思っていたらこれか』
『続かんとええけどな』
『あのぶよぶよに膨れた身体なんて勘弁してほしいもんだってのに』

歓楽街の端で酒瓶を抱えて横たわる男を見やり、空がやんわり白み始める中暖簾を下ろした軒に入る
裏口からビール瓶を出していた彼はオレに気付くと一瞬眉をしかめ、それから口を開くこともせずに作業に戻った
ガラガラと安い音のなる引き戸を開け、酒の匂いのしみ込んだ中に入る
店内はカウンターと衝立ての奥にビロード張りの緩いスプリングのボックスソファーが二つに回らなくなったミラーボールの下のカラオケ台と味気なく寒々しい
「港に土佐衛門があがったらしいですよ」
床を掃く背に来る途中に耳に挟んだことを伝える
彼は何の反応も見せない
「この町はもうあきません」
すっかり寂れた町は閑散として、若者は出稼ぎに出て戻っては来ないし、残った人は働けもせず酒を浴びて首を絞める
町でまともに動いている場所といえば堺の交易船の部品下請けをどうにか繋いでいる工場と無い金払わせて一夜を灯すこの歓楽街の数軒だけだろう
もちろんその中に彼のこの店は入らない
「あんたいつまでこんなところ残ってるつもりなん?」
オレンジの明かりの下でキラキラ光る彼の髪は何故か淫猥で劣情の最中に落ちたように見える
こんなくすんだ町のなかでなければ緩やかにこうべを垂れた稲穂か小麦のように風に吹かれるだろう
項の艶めかしさに気をとられて喉をならす心配だってしなくてすんだし、彼に足繁く通う客に心を煩わせることもなかった
バカにされても鬱陶しく思われても夜を生業とする彼がいたく気がかりなのだ
惚れた欲目でもなんでもいい
このどうにもならない町で明日死んでいない保障もわからん輩の手にいない保障もない
とにかく彼をもっといい場所に連れていきたかった
「あの人はもう帰ってこない。帰ってこないなら探しに行ったほうがなんぼもええやろ。な、謙也さん」


時代は昭和?大正?よくわかりませんがノスタルジックなノリで
謙也さんが誰かをずっと待ってて光が連れ出そうとする
?謙←光みたいな
光→謙→?みたいな
お店は?さんからの預かりモノ的な
雰囲気雰囲気^^;


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