2012/08/23 00:56
先にいろいろ見て、気になるものがあったらしい謙也さんに呼ばれるままに店内を回る
渋った真似をしてみせたりすると大げさに手招きをしてみたり、やっぱり服を引かれたりする
そういうやり取りだけ楽しんで、結局何も買わずに出ていく
何かの折りに、「金のない中学生のデートなんてショップの冷やかしくらいしか出来ませんね」と溢したら、「ウインドショッピングって言ったってや」と頭をぐしゃぐしゃにされた
だから謙也さんとのデートはだいたいウインドショッピングになっている
街を歩いていると、オレらみたいなのがぎょうさんいる
カップルや友達、家族いろんな人の中でオレらは友達にしか見えんのやろなぁ、といつも感じていた
別に他人から世間から恋人だと認識されていなくたって、謙也さんの隣で歩いて話して飯食ってられるなら、そんなことに意味なんてないとはっきりと言える
しかし、だからと言って恋人とキスしなくていいハグしなくていい手を繋がないでもいいというのとは話が変わってくるのだ
日も暮れて家々に明かりが点く変わりに、住宅街の道路に人通りがなくなってくる
今日のうちだけでも何度も裾を引かれたシャツに、人目を気にして手を引けない変わりなのだろうかとか思ったりもしたわけで
いや、それは建前でもうあと数分で「またあした」を切り出す前にその手を繋いでおきたかっただけなのだ
すると力なく揺れる手に手を重ねた瞬間、こっちがびっくりするほど身体をびくつかせて、よくわからない奇声を上げて固まってしまった
「お、お、お、お、え！？うん？」
「…………手」
「………………あ、はい」
「繋いでもええですか」
いわゆる恋人繋ぎはしなかった
ただ手を繋いで歩くだけ
「手、繋ぎたいんやと、思ってた」
「ん？」
「服めっちゃ引っ張りよるから」
「あ、ああ、あれ忘れてや」
「あのくらい、普通に手ぇ引いてくれたかて大丈夫ですよ」
「おお、……ん、ちゅーか、ただの癖やから、ガキ臭いやろ？」
「なら、ええです」
「昔っから服引っ張んなって言われてんけど、なかなか直せんくて」
力尽きたぁ
ﾎﾝﾄは手を繋ぐのが怖い謙也くんまで続く予定だったんですが、眠いのでぶちぎる
相手に「放して」ってされるのが怖くて自分からなかなか手を繋げない謙也くん
だからつい服を引っ張っちゃう
服なら肉感的に「放して」ってされるのが薄いから
謙也くん小さい頃やんちゃそうだからお友だちをぐいぐい引っ張って痛い放してみたいなことやってそうだな、と
トラウマとかそういうのでは全くなく、お洋服なら痛くないだろみたいな小さい頭で考えた知恵の刷り込みがなかなか抜けなくて、服を引っ張っちゃう謙也くんって可愛くないかなぁ！！
「謙也、服引っ張んな！」
っていう(´∀｀)