幼なじみの弱点 ※「昼休み」の続きものとなっています。 「お邪魔しまーす。」 なまえはそういうと慣れたように僕の部屋へ向かって歩き出した。 「ちょっ…まって。」 「あれ?妹子ママは?」 何の返事も無いことに疑問に思ったのかピタリと足をとめて僕の方を向く。 「仕事だよ。」 「なんだ、妹子ママに会いたかったのに。」 がっかりした様子のなまえは再び僕の部屋へ歩き出した。 僕らは幼なじみだから親との付き合いも深い。 特に僕の母さんとなまえは仲が良くて、たまに母さんの口からなまえとご飯を食べに行っただの聞くこともあるくらい、本当に仲が良い。 そして、僕らは幼い頃はお互いの家に行って遊んでいた。 だから家の作りはちゃんと覚えているのだろう。 なまえは迷う事なく僕の部屋の前で立ち止まり扉を開こうとしている。 「あーーーっ!だから、ちょっっっと待って!!」 部屋の入口の前でなまえの肩を引きどうにかして侵入を阻止した。 とてもじゃないけど、好きな人を迎え入れるような状態では無い。 誘ったのは僕だけど、本当に今日来るとは思ってもいなかったから。 僕に引き止められて、一瞬不機嫌そうな顔をしたなまえ。 「何、エロ本でも散乱してるの?」 「違うよ!でも汚くて足の踏み場も無いから、少し待って。」 「もー、わかったよ。」 僕の必死さが伝わったのか大人しくその場で待っていてくれた。 どうにか床に散らかった物を押し入れにぶっこみ、最低限の物だけにする。 小さく深呼吸をして扉を開くと廊下で大人しく待っているなまえと目が合った。 「…お待たせ。」 「ん?早いね。」 ニコニコと笑うなまえを部屋へ招く、ただそれだけなのに僕の心臓は爆発しそうだ。 そんなことを知らないなまえは床に敷いてある座布団に腰掛けて部屋を見回している。 「やっぱり部屋の雰囲気変わってるんだねぇ。」 「あ…当たり前だろ。」 「なんか不思議な感じ。」 静かに扉を閉めて、僕も床に座った。 見慣れた風景の部屋に好きな女の子がいるだけで、別世界にいる気分。 「お茶とか、飲む?」 なんだか落ち着かなくてそわそわしてしまう。 それがばれないように冷静を装うが逆にそれがぎこちなくなっているような気がする。 「ううん、それよかノート貸してよ。」 「あ、そっか。ごめん、忘れてた。」 緊張しすぎてうっかり目的を忘れるところだった。 僕がノートを探しているとなまえは部屋を物色しだした。 「妹子の部屋wiiあるじゃん。」 「あるけど…って勝手につけるなよ!!」 「妹子。スマブラやろ、スマブラ。」 コントローラーを二つ取り出して一つを僕に手渡す。 「ノートはどうするんだよ。」 「えー、そんなの後で良いよ。」 そういうとなまえはゲームを始めてしまった。 僕は見つけたノートを持ったまま立ちすくんでしまう。 するとテレビばかり見ていたなまえは立ちすくむ僕の方を向いて見て笑った。 「ていうか、気付いちゃったんだけど。私が妹子ん家来るんじゃなくて、明日とか妹子がノートを学校に持ってくればよかったと思うの。」 正論を言われ言葉を失う僕になまえは続ける。 「つまり、急いでやらなくても良いってこと。」 「でも後で大変だろ!」 「妹子が手伝ってくれるでしょ?」 「まぁ、ね…ってなんでだよ!」 ノリツッコミをする僕になまえはケタケタと笑う。 「せっかくだし、一緒にゲームしよう。」 ね。と小首を傾げて僕を見つめるなまえに嫌だなんて言える訳無い。 僕はなまえの隣に座った。 「ったく、少しだけだからね。」 何のために好きな女の子を呼んだのかわからなくなってしまったが、久しぶりになまえと一緒に笑いあえたようなきがする。 「いいい妹子さん、手加減してよ!」 「ふん、僕に勝とうなんて考えが甘いんだよ。」 だから、今日はとことん楽しんでやろう。 そう自分に言い聞かせた。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 幼なじみの弱点/妹子 fin 2010.06.13 |