乖離不安

「なんで、僕となまえは別の生き物なんだろう。」

真剣な表情をした妹子が私を抱きしめてぽつりと呟いた。

「え?」

顔をあげると少し困った表情に変わる。
私と目が合うと、その困った顔を隠すためなのか甘えるように私の肩に頭を乗せた。
茶色の柔らかい髪が私の首筋に触れて擽ったい。

「僕は…なんでなまえじゃないんだろう。」

私は妹子の背中に腕を回した。
そうすると妹子は私を強く抱きしめてくれる。

「なんでなまえは僕じゃないんだろう。」

私は妹子みたいに学があるわけじゃないから、妹子が何を言いたいのかよくわからない。
でも、妹子が苦しそうなのはよくわかった。

「妹子は私になりたいの?私は妹子になればいいの?」

無い頭をフル回転させて妹子に問えば、妹子は首を横に振る。

「妹子の言うことは難しいから、私にはわからないけど…私はずっと妹子のそばにいるよ。」

「…ありがとう。」

私の肩に乗せたままの妹子の頭を優しく撫でると妹子の体が小さく震えた。


















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乖離不安/妹子
fin
2010.06.05

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