スキンシップ 「おはよう、なまえ!君に会えて嬉しいよ!!」 一昔前の洋画を思い出すような台詞を言いながら、両手を広げ爽やかに笑う閻魔。 久しぶりに昼間から天界の仕事をサボってなまえに会いに来たのだ。 久しぶりに会えるので、愛しい彼女を喜ばせようと思い現世の恋人同士について勉強をしてきたというのに目の前のなまえはどこか冷たい目線で。 「は?」 思わず呆気にとられていたなまえは手にしていた昼食のパンを袋ごと落としてしまった。 「閻魔どうしたの…って馬鹿、何触ってんのよ。」 「ひどっ!こっちの世界では恋人に会ったら愛の言葉を囁いてハグをするんだろ?」 ピシャリと伸びてきた腕を叩いてみるが効果はなくスルリと腰に回った。 「それ…何情報よ。」 なまえは呆れた顔で閻魔を見つめた。 しかし、閻魔は気にせず腕にググッと力を込めて更になまえを引き寄せる。 「えーっと、映画?金髪の人が出て来た。」 「閻魔…たぶん、それは洋画だわ。日本の映画じゃない。だから離して。」 なまえは優しく胸を押して抵抗してみるが閻魔は気にせずヘラヘラ笑うだけ。 「そうなんだ。でもいいじゃん。」 「よくないよ。」 「何で!?オレはなまえ抱くの好きなのに。」 「馬鹿。私はこれからお昼なの。」 閻魔のおふざけに付き合ってたら授業が始まっちゃうでしょ、と言うとピシリと閻魔の額にデコピンを喰らわせて、するりと閻魔の腕から逃れた。 「いたたた…。じゃあ膝に乗る?」 「あのね…。」 はぁ、とため息をついて閻魔を睨むが効果はなく、閻魔は嬉しそうに膝を叩いて自分を呼んでいる。 なまえは無視をするように落とした昼食を拾い閻魔から離れた場所に座り直した。 「ほら。なまえおいでって。」 突然閻魔の声のトーンが変わり優し声で呼ばれた。 なまえがこの声に弱いことを閻魔はよく知っている。 思わずなまえが顔を向けると優しい瞳をした閻魔と目が合って。なまえは自分の頬が赤くなるがわかった。 「ばか、行かないって。」 「何で?」 染まった頬を閻魔に気付かれないようにそっぽを向いてみるが、気付いているのだろう。クスクスと意地悪に笑う。 「ねぇ、なまえちゃん。」 わざとらしく名前を呼ばれて、腹が立つが逆らえない。どうせこのまま拒否しても拒否しきれないだろう。 それに閻魔はしつこいのだ。 「しょうがないな。」 そう言って拒否するのをやめたなまえは立ち上がり、嬉しそうに自分を呼ぶ閻魔のいるところへ向かう。 膝に座るのは恥ずかしいから閻魔に寄り添うように座ると、再び閻魔の腕がなまえを包み込んだ。 「膝じゃなくて良いの?」 「だって、私は閻魔に抱きしめてもらうのが好きなんだもの。」 上目遣いで閻魔を見上げると、今日一番の笑顔が向けられる。 「そ?それはよかった。」 やっぱりオレ達は趣味が合うね、と言うと閻魔はチュッと音を立ててなまえの額にキスをした。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ スキンシップ/閻魔 fin 2010.05.07 |