雨の日の憂鬱と幸福 ―頭が痛い。 気圧が下がってきたから、これから雨が降ると思う。 庭で干してある洗濯物を取り込まなくては。そう考えても頭が痛く、体が重たくて畳に横になったまま動けない。 「何だか天気が悪くなってきたねぇ。」 声がしたので私は視線を動かすと不安そうに空を見ている芭蕉さんがいて。パタパタと可愛らしい足音を立てて私の方へやって来た。 「大丈夫?また頭が痛いの??」 静かに座ると芭蕉さんの手が優しく私の頭を撫でてくれる。 「んー…。」 私は体中の力を振り絞って芭蕉さん腰にしがみついた。 ふわりと芭蕉さんの匂いと墨の匂いが私の肺に広がり幸せな気持ちになれる。 「大丈夫?」 そう芭蕉さんが口を開いたとき遠くでゴロゴロと雷の音がした。 もうすぐ雨が降る。 「おっと。洗濯物を入れてこないと、ちょっと待ってて。」 撫でていた手がピタリと止まるが、決して私を腰から引き剥がそうとしない。 私は甘えるように首を横に振った。 「すぐ終わるよ。それに早くしないと洗濯やり直しになっちゃう。」 ちらりと見上げると、芭蕉さんの優しい視線とぶつかる。 「ね?」 私が諦めるように腕の力を緩めると芭蕉さんは私を優しく畳の上に寝かせもう一度私の頭を撫でてから、静かに立ち上がり庭へ歩いていった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 雨の憂鬱と幸福/芭蕉 fin 2010.03.29 (2010.03.29〜2010.04.26) |