逃げる髪と染まる頬

その髪に触れようと手を伸ばしたら、パチンと渇いた音が響き、伸ばした右手がひりひりと痛んだ。
目の前にいるのは妖しく笑う愛する人。

「何してんですか。」

油断も隙もないんですから。
なんて冷たく言い放つのは自分よりも2つ年下の後輩なまえ。
生徒会で仲良くなったのはいいが、度が過ぎたと思う。
俺の愛情表現やスキンシップは全て冗談か何かだと思われてしまう。
まぁ、確かになまえが転校して来たばかりの頃にセーラー服姿のなまえが可愛すぎて、追いかけ回した俺も悪かったけど。

「ひっどいなぁ、なまえ。そんな冷たい言い方されちゃ、俺泣いちゃうよ?」

おどけた調子で言うと、なまえは笑う。
その笑顔はなまえがこの学校に来てからずっと俺の心を魅了してやまない。

なまえが笑うから、俺は調子に乗ってもう一度目の前で揺れるサラサラの髪に手を伸ばした。
油断していたのか俺は二度目にしてなまえの髪をこの手で触ることに成功。
サラサラの髪が滑り落ちてしまわないように指に絡ませれば、ふわりとリンスの香りがした。

「ちょっ…閻魔先輩。」

俺が勝ち誇ったように笑うと、ほんのり頬を赤く染めるなまえ。
そんな姿を見れば、あながち嫌がってないのかな?なんて思うけど。
次の瞬間、再び掌を叩かれてしまった。

「馬鹿なことはしないでください。」

スルリと俺の指から髪が流れ、なまえは頬を赤く染めたまま一足先に生徒会室に入っていった。

嫌よ嫌よも好きのうち…ってね。
俺はなまえの髪を捕らえた右手をポケットに入れてから、生徒会室の扉を開けた。








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閻魔/逃げる髪と染まる頬
fin
2009.10.28

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