私を見つけて 太子はドタバタと足音が立つ程急ぎ足である場所へ向かっていた。 ある場所とは少し離れにある小さな小部屋。宝物を隠すようにその部屋を使ったのはいいが、自分の部屋と少し離れすぎだったと今更後悔している。 扉の前に到着してからは急ぎ足のせいで上がった息を整えて。 それから髪は乱れていないか、ジャージの襟は立っていないかなど身嗜みを厳重にチェックをする。 そして 「なまえ!」 スパーンと勢いよく扉を開くいたが、そこにいたのは愛しいなまえではなく、なまえの身の回りの世話をする者がびっくりした顔で自分を見ていた。 「…なまえは?」 「なまえ様は先程散歩へ行くとおっしゃっておりました。」 困ったように笑う姿から、またなまえが勝手に部屋を飛び出してしまったことが伺える。 「まったく、しょうがないやつめ。」 太子は再び急ぎ足で朝廷内を歩き回った。 「あー、太子。」 嬉しそうに自分を見ながら笑うなまえを見つけたのは朝廷を一周し終える頃。 どうしても見つからなくて不安になっていた頃だった。 「なまえ、おま…どこに行ってたんだ。」 額に流れる汗を拭き取りなまえに駆け寄ると、なまえはクスクスと笑う。 「何処…ってお散歩だから何処へでも行くよ。」 小首を傾げ不思議そうな表情をするなまえは掴み所のない風船のようだと太子は思った。 自分がしっかりと手にしていないとふわりと飛んで失ってしまう。 「私に黙って何処かヘ行くなと言っただろうが。」 手を伸ばしてなまえの細い手首を捕らえた。 なまえが自分から離れないように強く引き寄せれば風にのってなまえの甘い香りがする。 「ふふふ。珍しく太子がイケメンだ。」 太子の真剣な顔に面白そうに指をさして笑うなまえ。 「ふざけてる場合じゃないんだぞ!って聞いてるのか。」 「えー。」 楽しそうに笑うなまえは掴まれた手首を自分に引き寄せれば、その反動で少しだけ二人の距離が近くなり、太子は自分の心臓が速くなったのを感じた。 「何処に行っても太子なら私を見つけてくれる。」 でしょ?と小首を傾げてなまえは太子を見つめた。 「と、当然だ!私は摂政だぞ!!」 いつものように偉そうな口調だったが、太子の顔は妹子のジャージのよりも赤かった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 私を見つけて/太子 fin 2010.04.04 |