恋人使用法 「鬼男、出掛けようよ。」 私は隣で真面目に勉強している褐色の肌した男に話しかけた。 「何言ってるんですか…先輩。明日は落とせないテストなんでしょ。」 「だって今更無理だもん。覚えられない。」 シャーペンを投げ捨てて机に上半身を伏せる。鬼男を見上げると呆れたような困ったようなそんな顔で私を見ていた。 「じゃあ、もう少しやってから息抜きにコンビニ行きましょ。ジュースを奢りますよ。」 「えー、アイスがいい。」 口を尖らせて足をバタバタとこどものように動かせば「まだ寒いですよ。」と困ったように笑う。 それでも私の我が儘に付き合ってコンビニに行ったらアイスを奢ってくれるんだろうな。 「ほら、先輩もう少し。」 私が投げ捨てたシャーペンを机に戻して、鬼男が私の上半身を机から引き離した。 「ううう。」 渋々受け取ると、鬼男はニッコリと微笑み教科書を広げてくれる。そもそも今日はデートの予定だったのに、突然先生がテストの予定を入れてきたのだ。 「…せっかくのデートだったのにごめんね。」 教科書とノートに向かう前に改めて鬼男に謝ると、鬼男は首を横に振る。 「いいですよ。僕は先輩と一緒にいられるだけで幸せですから。」 「なっ…」 予想外の一言に頭が爆発するかと思った。いや、爆発したかも。 「さ、頑張ってください。コンビニ行かないんですか?」 「いいい行きます。頑張ります!!」 ガバッと効果音が付くくらい教科書とノートにかじりつく。 ああ、もう本当に鬼男は私の扱い方をよくわかってる。 チラリと鬼男を盗み見ると雑誌を見ていた鬼男と目が合って嬉しそうに微笑んだ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 恋人使用方法/鬼男(現代) fin 2010.02.27 (2010.02.27〜2010.03.29) |