優しい掌 部屋の隅っこで芋虫みたいにうずくまってる私。 ああ、女って面倒。なんで毎月こんな痛い思いをしなくちゃいけないんだろう。 腹痛と格闘しながらそんな事を考えてるとスッと襖の開く音がした。芭蕉さんか曽良兄さんが入って来たみたい。 私は誰が来たかも確認しないでもぞもぞと動きながら痛みが和らぐ位置を探す。 「…。」 部屋に入って来た『誰か』はたぶん、曽良兄さんかな。芭蕉さんだったら、私がこんなうずくまってるだけで病気じゃないのかと騒ぐもの。 『誰か』の気配は無言のまま私の隣まできて、そのまま腰を下ろしたようで。そして、私の背中から腰にかけて優しく摩り始めた。 「!?」 私はびっくりして顔をあげた。 隣には予想通り曽良兄さんがいて、お茶を飲みながら私の腰を摩っている。 「曽良、兄さん?」 「何か?」 「…っ。」 兄さんが優しいなんて意外です。と喉まで出かかっていたが再び鈍い痛みに襲われてもぞもぞと体を小さくするはめになった。 その間も曽良兄さんの温かい掌は私の腰付近を摩り、痛みが幾分か楽になるような気がする。 「あ、りがとうございます。」 「いえ。」 どうしようもない痛みと心地良い曽良兄さんの掌に私は次第に瞼が重くなって夢の中に落ちていった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 優しい掌/曽良 fin 2010.03.24 |