白い塔と ※閻魔夢「白と黒と」と関連ある作品となっています 最近、大王はどこか落ち着きがない。昔から仕事をサボる癖はあったけど、それとは少し違う。 屋敷のそばに出来た高い塔が関係しているらしいが、何も教えてくれやしない。 今日は休憩時間なのに珍しく大王が書類を片付けている。 「おや、珍しいですね。」 「ん。まぁね。」 「何か用事でもあるのですか?」 「ヒ・ミ・ツ。ああ、鬼男君は休憩でいいよ。」 ヘラヘラと笑う表情はどこか穏やかで。まぁ、真面目に仕事をしているだけいいかと思い、先に休憩をもらった。 長い時間室内にいるので、休憩時間には決まって外の空気を吸いに出る。慣れたはずの風景に新しく出来た白い塔が痛々しく光を反射して、自然と目に入って来た。 大王はあの塔に何を隠しているんだろうか? 元々掴み所のない人だ。考え出したらきりがない。 大きく伸びをして、散歩でもしようと目線を反らした瞬間、いつも閉まっている塔の最上階の窓が開いた。 改めてそちらに目線を向けると、窓から誰かが自分を眺めているようで。 病的とでも言えるくらい白い人影は、ここから見ても美しく感じた。 その正体はまるでわからないというのに。 目を懲らしてみると、その人影は女性のようだ。向こうも自分を見ているようで。 目を反らせなくなって暫く見ていると彼女は慌てて窓を閉めてしまった。 「あ…。」 がっくりと肩を落としていると後ろから気配を感じ、振り返るとゆらゆらと大王がやってくる。 「大王。」 「君、こんなところで何を見ているの?」 柔らかい言い方であったが目が笑っていない。ゾクリと背筋が凍ったように冷たくなった。 「い…いえ。何も。」 「ふぅん。ならいいんだけど。」 「大王…」 「じゃあ、オレも休憩もらうね。」 大王はそういうと真っすぐ白い塔に入っていく。塔を見上げるといつも通り窓が閉まったままだったが先程見た女性の影が見えたような気がした。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 白い塔と/鬼男 2010.02.10 |