恋の魔法 妹子は私の前でよく笑う。 たぶん私と一緒にいるときに口がへの字になっていることなんてないと思う。 ほら、今も私の目線に気付いた妹子の嬉しそうな顔といったら…。 「なまえ!」 そして、仕事中だろうが休憩中だろうが、どんなときでも妹子は私を見つけると声をかけてくれる。それはもう飛び切りの笑顔で。 妹子の嬉しそうな表情を見ていると私まで幸せになってしまう。 「なぁに。」 私が答えると妹子は更にうれしそうに笑う。 誰かが妹子は私に恋をしていると言っていた。ねぇ、貴方はどんな気持ちで私を見ているの? 「ううん。ただ、呼んだだけ。」 くしゃりと妹子の大きな手が私の頭を撫でると、ほんのりと妹子の頬が赤くなって私の心は擽ったくてフワフワしちゃう。 私は恋なんてしたことないけど、妹子を見ていると、いいなと思う。 「ねぇ、妹子。」 「ん?」 宙で私と妹子の視線が合った。 妹子の目は優しくて心地がいい。 「妹子は私の事、好き?」 「えっと、まぁ…好きだよ。」 妹子は平然を装っていたけど目が一瞬揺れたのを私は見逃さなかった。 私は一歩妹子に近づいてその目を捕らえてしまう。 「それは恋?」 逃げられないようにじっと見つめていると妹子の耳が赤くなっていく。 「…恋、かな。」 言わせてしまったけど、これが告白ってものかな。 宙に浮いたりしていた妹子の視線が、急に真剣なものになって。 普段よりずっと凛々しくてかっこいいと思う。 「恋ってどんな感じ?」 妹子以上に真剣な目で訴えると、彼は首を傾げた。 「私ね、恋がしたいの。」 「…うん。」 少しだけ妹子の表情が曇った。 何か言葉が足りなかったみたい。 「あ、でもね。誰でも良いわけじゃないの。妹子に…妹子だけに教えてもらいたいの。」 そういうと、曇っていた妹子の顔がジャージの色と大差ない程赤くなっていく。 「僕、で…いいの?」 妹子の目が大きく開いた。たぶん驚いているんだと思う。私はいつもの妹子みたいに笑って見せた。 「うん。私は妹子がいいの。」 すると、妹子はこれ以上ないくらい私の顔に近づいた。 鼻と鼻が触れてしまいそう。 「その言葉、告白だよ。なまえ。」 「そう?」 「たぶん、気付いてないだけでなまえは僕に恋してるんだよ。」 視界いっぱい妹子で埋まっていて頭がフワフワする。 これが恋? 「そっか。」 私がそう言うと、妹子は私の体を引き寄せて近づくどころかくっつけてしまった。 ドキドキと妹子の心臓が早く鳴っていて、それを耳にしただけで私の心臓も少しだけ速くなった。 「じゃあ、もっと妹子の事好きにさせてよ。」 「勿論。僕以外の男なんて見えなくらい夢中にさせてあげる。」 苦しいくらい強い妹子の腕の中で、私は妹子の嬉しそうな笑顔の源“恋”を知った。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 2010.01.15 fin 恋の魔法/妹子 |