雪遊び 寒さのあまり妹子は目を覚ました。窓の向こうを見ると空には雲がかかりチラチラと雪が降っている。 もうそんな季節なのか、と思いながら暖房器具のスイッチを押していると庭から元気な声が聞こえてきた。 「いーもーこーっ!」 声だけで誰だかわかる。妹子は急いで窓を開いた。開いた瞬間冷たい空気が入り込み部屋と外の温度差で体が震えた。 窓の向こうに広がっていたのはどこまでも続く銀世界。その真ん中に少女が一人立っていて、その少女こそ先程妹子を呼んだ張本人である。 「あ、妹子!雪だよ!!」 寒さで鼻や頬が赤く染まっている。そんな顔で笑う姿は子どものようで。 うっすらとした光が雪に反射してその笑顔を輝かせている。 「し…知ってるよ。ていうか、何してるの。」 とても寒かったのにその輝く笑顔に意識を奪われてしまった。 「妹子にこの雪を教えてあげたかったの!」 なまえはそう言うと雪を丸め妹子に向かって投げ付けた。 残念ながらなまえの肩では妹子まで届かなかったが、その姿があまりにも可愛らしくて、妹子は思わず頬が緩んだ。 「妹子もおいでよ。」 雪を直接触ったせいでほんのりと赤く染まった手を妹子に向けて笑う。 妹子は誘われるように外に飛び出してなまえを抱きしめた。 「い…妹子!?わっ!」 突然の出来事になまえはバランスを崩し妹子共々雪に倒れ込んだ。 「ぶわっ!?冷たっ!!」 薄着のまま飛び出した妹子は凍みるような冷たさに体を起こそうとしたが、なまえはクスクス笑いそれを阻止した。 「ダメー!」 「ば、馬鹿!風邪ひいちゃうよ!!」 「だって妹子が悪いんだよ。」 殆ど押し倒すように倒れたせいで、外なのに恥ずかしい恰好になってしまっている。 「ごめんって!」 恥ずかしさと冷たさに顔を真っ赤にした妹子が言うと、なまえはようやく妹子を解放する。 妹子は素早く立ち上がると、なまえを抱き抱えて部屋へと走りだした。 「い、妹子!?」 「しっかりつかまってて。」 雪に触れていた部分がジンジン痛み、寒さで体が震えている。しかし、抱き抱えたなまえだけが太陽のように温かかった。 視線を落とすと突然の出来事に体を固くして妹子の腕に収まったなまえ。その姿は緊張している猫や犬のようで、愛おしさに胸が締め付けられ。 靴を脱いで勢いよく部屋に入ると、フワリと温かい空気が二人を包み込んだ。温かさにホッと安堵の息を漏らすと胸におさまっていたなまえが暴れだす。 「この部屋暑いよ!はーなーしーてー。」 妹子はニヤリと笑ってさっきのお返しと言わんばかりに全身が雪でびしょ濡れになったなまえの体強く抱きしめた。 「だーめ。」 「いやー、部屋は暑いのに、妹子は冷たくて気持ち悪い!」 「ひどっ!なまえの方が冷たいって。ていうか、びしょ濡れじゃん。」 「妹子だって濡れてるもん。だから離して。」 「ふーん…じゃあ二人で風呂入ろうか?」 「はぁ!?」 妹子はそういうと、なまえの体を持ち上げて風呂場へ向かい出す。 「ちょっ、何してんの!?変態!」 なまえは妹子の胸を叩いて抵抗したが、妙にご機嫌な妹子には敵わず風呂場まで連行されてしまった。 なまえを解放すると妹子はニッコリと笑う。その笑顔になまえは少し後ずさった。 「言っておくけど、先に誘ったのはなまえだからね。」 雪遊びには誘ったがこんな予定ではない!と言おうと口を開いた瞬間に妹子の唇が口を塞いでしまったのでその言葉が出て来る事はなかったという。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 雪遊び/妹子 fin 2009.12.17 |