予約 色鮮やかな光が夜空を飾る。その光と共に毎年聞き慣れた心躍らされるような音楽が流れている。 なまえは歩く足を止めてその装飾を見上げた。 去年まではこの季節になると女友達と集まってご飯を食べたり実家に戻ることが多かった。 今年はどうしようか。 自分には曽良という恋人がいる。しかし、その恋人はどうもイベント事が苦手なようで今まで特にイベントを意識して共に過ごしたことが無い。 曽良が望まないなら自分も無理強いをしない、と心に決めていたなまえだったがやはりクリスマスに恋人と過ごせないのは淋しいものがある。 「なまえさん。」 聞き慣れた声が聞こえたのでそちらに顔を向けると曽良が立っていた。 「あ、曽良くん。」 なまえが嬉しそうに微笑むと、曽良も珍しく優しい表情を見せた。 「こんなに寒いところで何をしているのですか?」 赤く染まるなまえの頬に触れれば、ひんやりと冷たい。どれだけ長い間ここにいたのかが想像できる。 「電飾が綺麗だったので、つい…。」 曽良の温かい手の温もりが擽ったくてなまえは首を竦めた。 なまえの言葉に曽良も光り輝く飾りを見上げた。 「ああ、もうクリスマスですね。」 「えぇ。」 なまえも再び見上げれば、先ほど一人で見ていたときよりもずっと美しく見えて。自分の現金さが恥ずかしかった。 「そうえば、なまえ。24日は暇ですよね。」 曽良はいつまでも電飾を眺める の手を引いて自分に向かわせる。 お互いの手は冷たいが触れた部分から少しずつ熱を持つ。 「え?はい、特に用事はありません。」 「それなら、その日に迎えに行きますから。」 曽良はそういうとなまえの手を引いて歩き出した。ギュッと手を握られていつのまにか温かくなった手が心地よい。 「何処かに行くのですか?」 なまえは極力曽良のペースに合わせて隣を歩こうとしたが、なかなか隣に行くことが出来ない。珍しく曽良の歩くペースが早いからだ。 「さぁ。」 後ろから曽良を見るとほんのりと耳が赤く染まっているのがわかった。 きっとこの早歩きは彼なりの照れ隠しなんだと気付いて繋いだ手を強く握る。 「では、楽しみにしていますね。」 なまえの言葉に曽良は何も答えなかったが、曽良もまた手を強く握り歩いた。 クリスマスまであと僅か…。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 予約/曽良 fin 2009.12.17 |