涙の理由

恋は盲目とか惚れた方が負けって言うけど、私はホントにそれに当て嵌まる。
目の前にいるカレー臭い男を見ると胸がキュンってなるし、笑ってもらうと泣いてしまうほど嬉しくなる。

「何を泣いているんだ?」

彼からしたら突然泣き出した私の顔を不思議そうに覗き込む太子。
可愛い顔してさ、ホント悔しい。

「見ないでよ、馬鹿太子!」

噛み付くように言えばタジタジと後ろに下がっていく。

「なっ、私は心配してやってるんだぞ!」

こんなふうに人を好きになったこと無いから、どうしていいかわからない。

「太子が悪いんだもん。」

そうだ、太子がいけないんだ。
私の頭の中が太子だらけだから。

「えーっ!?」

太子は困ったようにオロオロしている。
そして、突然私を抱きしめた。
カレーのニオイがする。

「すまん!」

そう言いながら泣いている子どもを慰めるように背中を撫でた。

「おまえを悲しませてる事に気付けなかった。」

とても早く動く心臓の音が聞こえる。

「愛する女の気持ちに気がつけないのでは摂政失格だな。」

ああ、きっと今、太子は悲しそうな顔をしているに違いない。
伝えなきゃ。
私が泣いてる理由を。
勘違いさせてしまっているもの。

「…違うよ、太子。」

私は太子の背中に腕をまわした。
すると更に心臓の音が近くなった。最初は私の心臓かと思ったけど、太子の心臓の音だ。
私の心臓と太子の心臓が同じくらいの早さで動いてる。
なんだか嬉しいな。

「私は悲しくて泣いてるわけじゃないよ。」

太子の胸に押し付けられていた顔をあげて、彼を見つめれば耳まで真っ赤になった太子の顔があった。
もう、可愛いな。

「太子が好きすぎるから。」

あ、また泣きそう。

「ちゃんと気付いてよ、馬鹿。」

私は恥ずかしくなって再び太子の胸に顔を埋めた。

「ば…馬鹿って言うでない!ちゃんと気付いてたぞ!!」

さっきより強く抱きしめたれて、ちょっと苦しかったけど太子も照れてるって思ったら嬉しくなって、また泣いてしまった。


















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涙の理由/太子
fin
2009.11.08
(2009.11.08〜2009.12.10)

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