階段の先

「グ・リ・コ!」

なまえはそう言いながら階段を一段ずつ登る。ひらりと舞うスカートが可愛らしいな、と閻魔は思った。

「閻魔様ー、次いくよー。」

少し高いところまで登ったのでなまえは声を張り上げる。閻魔がよく見えるように右手を大きく振った。
閻魔は応えるように右手を挙げる。

「じゃーんけーん、ぽん!」

愛しい人は少しずつ階段の奥にある扉へと引き込まれてしまう。
閻魔は平然を装っていたが正気ではなかった。

「どーしたの?閻魔様の勝ちだよ??」

階段の上からなまえは閻魔を呼んだ。しかし閻魔はこの階段を上ることは出来ない。

「ああ…、いいや。オレはパス。」

あの扉は人間の魂しか通れない『転生の扉』。神である閻魔は通るどころか近づく事すらできない。
人間の魂は、転生が近づくとこの扉に呼ばれ本人の意志とは関係なく上っていく。

閻魔はなまえの為に頬と口角を上げる。
もしも許されるのならば今すぐなまえを階段から降ろしたい。しかし、それは許されない。

「えー…。」

なまえは階段の下にいる閻魔と上にある扉を交互に見比べた。
扉の向こうには何があるのだろう?今のなまえにあるのは好奇心だった。
しかし、閻魔がこの遊びと扉に興味が無いと勘違いしたなまえは階段を一段抜かしで降りた。
いくら気になることがあるとは言え、閻魔がいなくては意味がない。
なまえは残り2段のところからジャンプして、閻魔にしがみついた。

「なまえ!?」

なまえの予想外な動きに少しバランスを崩したが、しっかりと受け止めてやれば、なまえは嬉しそうに笑った。

「ねぇ、次のとこ行こうよ。」

「いや…だって上りたいって言ったのなまえだろ?」

「閻魔様が来ないなら行かない。」

閻魔にしっかりとしがみつき、まるで小猿のようななまえ。
それに応えるように閻魔もなまえを強く抱きしめた。

「そっか。」

「ね、閻魔様。次はどこに行くの??」

ニコニコと閻魔に向けられた笑顔。離したくないと閻魔は心から思った。

「そうだな、鬼男君に内緒で三途の川まで行ってみるか?」

なまえを地面に降ろし、なまえの手をにぎりしめた。温かい体温が閻魔の掌に伝わる。

「本当?じゃあ、また裁きの間に花束作ってあげるね。」

なまえも閻魔に応えるように強く手をにぎりしめた。
一歩ずつ二人で扉を離れていく。なまえは誰かに呼ばれたような気がして足を止めたが、閻魔が心配そうな顔をするので再び足を動かした。
















二人は強くその手を握り合う。
決して離れないように。

















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階段の先/閻魔
fin
2009.11.17

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