苛々する態度の理由

友人であるなまえは今にも泣き出しそうな顔をしている。
別にこんな表情をさせたかったわけではない。ただ、なまえが勝手に傷ついているだけだ。




「あの…その、ごめんなさい。」

しょんぼりと肩を落し、オロオロとする姿はいつ見ても苛々する。
曽良は心の中で舌打ちをした。

「謝るなら最初からやらないでもらえませんか?」

曽良が声を出すと、なまえの肩がピクリと跳ねた。

「…はい。」

何故かきつく言ってしまう。
本当だったら笑ってくれた方がずっと良いはずなのに。

「あの、曽良くん…。」

不安そうに僕を覗き込むその表情。どこか怯えている仔犬のようだ。

「別に怒ってはいませんから、そんなに怖がらないで下さい。」

見ていて苛々します。
そう告げればまた悲しそうな顔。
なまえはそれを隠すように顔を伏せてしまった。

違う、そうじゃない。

普段はニコニコと笑顔絶やさないくせに、曽良の前に来ると決まって固くなるなまえ。
それがまた曽良の苛々を増幅させる。

「なまえさんは、僕の前で笑うのが嫌なんですか?」

ぽつりと呟くと、なまえは顔を上げた。
その表情には困惑が見て取れる。

「違います!」

今までに無いくらい悲しそうな顔、でも必死に何かを訴えようとする。

「でも、曽良くんといると…その…。」

そういいながら小さくなるなまえ。

「何ですか?さっさと言ってください。」

口ごもるなまえにそう伝えると、再び肩が跳ねた。
しかし、いつもと違い彼女の耳がほんのり赤くなっている。

「?」

不審そうに見ていると、なまえは目を泳がせて。

「曽良くんのそばにいると、心臓が早く動きすぎてどうしようもないんです。」

耳の赤がまるで顔まで移ってしまったように、なまえの顔は赤い。

「へ…変ですよね。すみません。」

しょんぼりと肩を落とすなまえ。

ああ、そうだったのか。

「何で僕といると心臓が早く動くんですか。」

子どもではないから理由なんてわかりきっている。だが、今まで苛々させた罰だと言わんばかりに曽良はなまえを問う。

「え…っと、なんで、ですか。」

なまえはもう首まで真っ赤に染めている。

「早く言ってください。」

わざときつくに言えば、泣き出しそうな目。さっきまでだったらただの苛々にしかならなかったが、今は違う。

「…、っ。」

なまえは覚悟を決めたのか深く深呼吸をした。

「曽良くんが、好き…だからです。」

恥ずかしそうに俯くなまえを見れば自然と曽良の口角が上がる。
曽良はそっと彼女に近づき耳元で囁いた。

「なら、笑ってください。」

彼女は少し顔をあげて曽良を見た。
しかし、再び俯いてしまう。自然と近くなる目線に戸惑っているようだ。

「悲しい顔より、僕はなまえの笑う顔の方が好きです。」

そう囁いて俯くなまえの額にキスをすれば、腰を抜かした彼女はペタリと座り込んでしまった。
その顔は林檎よりも赤い。

「あとは、その態度も少し直してもらえると嬉しいですね。」

ふぅ、と曽良がため息をついて手を差し延べれば怖ず怖ずとその手を重ねる。

「ごめんなさい。」

「まぁ、これは徐々に慣れればいいです。」

そう告げると、なまえは曽良が望む笑顔を見せた。





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苛々する態度の理由/曽良
fin
2009.11.12

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