お酒の勢いに任せてみた 頭がガンガンする。 僕は頭に鈍い痛みを感じゆっくりと目を覚ました。 昨日は久しぶりに飲みすぎたな…なんて考えていると、ふと自分の布団に自分以外の誰かがいることに気がつき、ぎょっとした。 僕はそっと、それが何者なのか確かめるべく、布団を上げた。 そこに眠っていたのは、最近朝廷にやってきた方で、何やら太子に気に入られて昨日の宴会に無理矢理参加させられていた唯一の女性、なまえさんだ。 僕は慌てて、自分の身なりとなまえさんの服の乱れを確認して布団を戻した。 大丈夫、何もなかった。 自分にそういい聞かせて布団から出ようとしたとき。 「ん…おはようございます、妹子様。」 なまえさんはゆっくりと布団から出てきた。 まだ眠たそうに目を擦る姿はなんとも可愛らしい。 「昨日は随分とお酒を頂いていたようですが、ご気分は如何ですか?」 業務的な言葉を眠たそうな顔で述べた。 器用なもんだ。 「え…あ。」 本当は二日酔いで頭が痛いが大丈夫です、と答えた。 なまえさんは僕の言葉を聞くと 「それはよかった。では、おやすみなさい。」 そういって再び僕の布団に沈んでいった。 「あ、はい。って、えぇー!?」 僕が驚いて声を出すと、再び起き上がった。 「んー…。」 頭がきちんと働いていないのか、目は開いていないし、頭がフラフラしている。 「すいません、昨日はなかなか寝付けなくて…。」 申し訳なさそうに言うなまえさんはやはり眠たそうだ。 「あ…そうなんだ。ていうか、何でなまえさんは僕の布団で寝てるのさ。」 僕はどうしようもないこの疑問をなまえさんにぶつけた。 するとなまえさんは眠たそうな目を開き、僕を見つめた。 ―あ、もしかして…やらかしちゃったか? 「妹子様、覚えていないんですか?」 ひやりと冷たい汗が背中を流れる。 僕はゆっくりと頷いた。 そんな僕を見てなまえさんはくすっと笑った。 「そんな深刻な顔をしなくても大丈夫ですよ、何もしてませんから。」 その言葉にほっと胸を撫で下ろすが、それだけではなまえさんがここで眠っていた理由にはならない。 「じゃあ、なんで…。」 「昨日、随分とお飲みになっていて足元が覚束ないので、私がこちらのお部屋までお送りさせていただいたのですが…」 そこまで言うとなまえさんはほんのりと頬を赤めた。 しかも、半笑いだ。 なんか、ムカつくな。 「何ですか?さっさと言ってください。」 僕はぶっきらぼうにいいやった。 不機嫌な僕に気がつき、なまえさんは少し慌てながら話を続けた。 「そしたら、妹子様が布団を開けて…一緒に、寝ようと…お誘い下さいまして。」 「…。」 僕の背中に再び冷たい汗が流れる。 僕から誘ったのか…。 「本当は妹子様が寝付いたら抜け出そうと思っていたのです。ですが、私を抱き枕と思われたのか…なかなか抜け出せなくて。」 気がついたら朝でした、と困ったように笑うなまえさん。 穴があるなら入りたい…って言うのはこう言うことなんだなと初めて気付いた。 僕はどうしていいかわからず、とりあえず謝った。 するとなまえさんは顔を真っ赤にして首を横に振る。 「そんな…太子様に相談した私も悪かったんです。」 僕が何だって?といった顔をするとなまえさんは慌てて目線を泳がせた。 「あ、いや…では、私はこの辺で失礼します。」 先程まで眠たいと言っていた人間の動きには見えなき程素早い動きでなまえさんは部屋を出ていった。 これはあとで太子に問い詰める必要がありそうだな。 僕はいまだに痛む頭を押さえながらゆっくりと立ち上がり着替えを始めた。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 妹子/お酒の勢いに任せてみた fin 2009.10.27 |