溢れ愛

「好きです」

僕がそういうと、彼女は頬を染めて笑う。
なんて可愛い僕の愛おしい人。

「好きです」

僕がそういうと、彼女は頬を染めて「私も」と答える。
なんて可愛い僕の愛おしい人。

「好きです」

僕がそういって手を握ると、彼女は頬を染めて握り返してくれる。
なんて可愛い僕の愛おしい人。

愛を語り合うだけで満たされていたのに。
肌を触れ合うだけで心が潤っていたのに、愛おしい気持ちが全てを枯らしていく。
次も欲しくなる。
貪欲に彼女を欲してしまう。

「鬼男」

ある日彼女は真っすぐ僕の目を見ていった。
昔はその瞳に見つめられるだけで満足だったのに今は違う。
彼女の瞳が他を映すだけで焦げてしまう。
僕は彼女の視線を逃さぬように見つめ返した。
早く早く彼女の言葉を聞きたくて、急かすように微笑みかける。
しかし、彼女は焦らすように瞳を泳がせた。

「なまえさん?」

「うん、あの、ね。」

覚悟が決まったのか彼女は深呼吸をする、釣られるように僕も息を吸う。

「好きよ」

たった一言に僕の全てが止まった。
彼女の言葉に心が揺れる。
嬉しいはずなのに、心が揺れる。

「なまえさん…?」

彼女からそんな言葉を言ってくれたことは無かったから新鮮で、今でもさっきの言葉が耳から離れない。

「ふふふ、なんだか恥ずかしいね?」

いつもよりも赤く染まった頬。
はにかんだ顔。
渇いた心に染み渡る。

「どうしたのですか?」

「いつも鬼男から幸せを貰ってばかりだったから」

「そう…でしたっけ…」

初めて彼女に恋したように胸が苦しい。

「たまには、私から鬼男に愛をあげたいの」

彼女から繋いでくれた小さな手。
伝わる熱はいつもよりも高くて、ますます僕の胸を熱くした。

「僕も好きです」

もっと伝えたい言葉があったけど、今の僕にはこれが精一杯だった。


















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溢れ愛/鬼男
fin
2013.01.09

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