さあ、どっち?

浮足立った学校帰り。
明日からまた学校だというのは嫌だけど、今日は楽しいハロウィンだ。
私はお菓子を集めるため近所を歩いた。わざわざ真っ黒いワンピースに着替えて。
先ずは妹子のところから行ってみようかな。

「TRICK OR TREAT!」

妹子を呼び鈴で呼び出して玄関先でそう叫ぶと、妹子は露骨に嫌な顔をする。
ああ、これは太子を見下してるときと同じ顔だ。

「あんた…いい年して恥ずかしくないんですか?」

年上に対してあんたなんて失礼な男だよ。
しかも上から下まで余すところまで見た上でわざとらしいため息…妹子ってこんなに生意気な後輩だっけ?

「うるさいなぁ、妹子は私に悪戯されたいの?」

「はいはい、お菓子ですね」

妹子はめんどくさそうに言うと家の中に消えていく。

「TRICK OR TREAT!魔女子!!」

「ぎゃーっ!!」

突然背後から肩を叩かれて驚いた私はみっともなく悲鳴をあげてしまった。
その声に反応したのか家の中にからバタバタと足音が聞こえてくる。
私はゆっくりと振り向き、私の肩にある手の主を確かめた。

「あ、太子…?」

「はー、びっくりした」

太子は目を大きく見開いて私を見ている。

「いや、びっくりしたのは私だから、ね?」

肩に置きっぱなしになっている手を振り払う。
太子は気にすることもなくへらっと笑って私の肩に再び手を乗せた。

「ていうか、魔女子って何?」

「ん?その格好…可愛らしい魔女をイメージしたんだろ?なまえによく似合ってるな」

予想外の台詞に顔に熱が集まる。

「お、お世辞でしょ」

「いやいや、そんなに可愛いなら悪戯されてもかまわないな」

身構えるように一歩身を引くと、背中に人の気配を感じ視線を送った。

「あ、妹子…」

「太子にしては気障な台詞ですね」

私たちの会話を耳にしていたのか妹子は厭味たっぷりにいうと私に視線をよこした。

「どうぞ、先輩。チョコでよかったですか?」

オレンジと紫のハロウィンをモチーフにした可愛らしい袋を私の掌に置く。

「あ、ありがとう」

「いいえ、でも、折角だから先輩…なまえさんに悪戯してもらおうかな…」

「へっ?」

「んな!?」

「太子には先輩からの可愛い悪戯があるのに、僕には何もないなんて狡いじゃないですか」

二人の男に挟まれて私は身体を固くする。
顔が熱いやら、胸が高鳴るやら、私の思考の範疇外なことが重なり頭が白くなりそうだ。

「妹子はお菓子をあげたんだろ!」

「太子なんてTRICK OR TREATって言ってもらってないですよ」

頭の上で火花が散っているようだが、私は妹子からもらった袋を胸に固まったまま二人のやり取りを聞いた。
すると二人が私を見つめる。

「なまえは…」

「先輩は…」

二人はそういうと今まで見たことの無いような笑顔を浮かべた。


















「「どちらを選ぶ?」」





















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さあ、どっち?/飛鳥(現代)
fin
2012.10.31

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