独占欲望

こどもっぽい私の彼氏は、今日もこどもっぽい我が儘をいって私を困らせる。
見た目も行動も全ておっさんのくせに我が儘だけはこどもレベルだから困る。

「で、何がそんなに気に食わないの?」

ため息混じりに問うと太子は瞳に涙をため、鼻水流していう。

「最近なまえが綺麗だから」

「は…」

何を言うのかと思ったら…という言葉を慌てて飲み込む。
だってこの男には常識は通用しないのだから。
普通己の彼女が綺麗になったら喜ぶべきところで、こうやってこどものように駄々をこねるなんて普通ならありえない。

「で、それがどう貴方の不満に繋がるの?」

私は痛むこめかみをおさえた。
こうすることで愛しい人が喜ぶと思って私が行った努力を否定するような理由があるのだと言い聞かせる。

「いいか、なまえよく聞け!朝廷内でも最近なまえの名前が持ち上がるほどなんだぞ!」

「……うん、それで?」

私はあえて彼の話をとめずに先を促す。
ここでとめても無駄だということを長年の付き合いでわかっている。

「それだけならまだいいが、妹子やあのフィッシュ竹中さんまでなまえに色目を使っている気がするでおま!」

妹子さんは以前会ったことがあるが、フィッシュ何とかさんはまだ会ったこともないのにどうやって色目を使われるのだろう?
まだ言い足りないのかギャーギャー喚いているがもう頭に入ってこない。
私は一息置いて再び太子に問う。

「じゃあ、太子は私が綺麗になっても嬉しくないの?」

私の一言に太子は一瞬怯む。
視線を泳がせたあと再び私と目を合わせた。

「例え、その綺麗になった理由が太子だとしても?」

「いや、それは…………でも駄目だ!」

このまま言いくるめることが出来ると思ったがそうもいかなかった。
さっき泣いたせいで真っ赤になった目を見開いて私に近づき、私の腕をとった。
手汗で湿った太子の手。

「どうして?」

「なまえは私の…私の彼女だから他の男に見られるなんて許せん!」

とんでもない我が儘と独占欲。
こどものような言い分だけど、この我が儘が人の上に立って指揮が取れる理由の一つでもあるんだろう。

「じゃあ、私を閉じ込めてよ」


「?」

「太子だけのものになってあげる」

湿った掌は何となく嫌だったので、手の甲にキスを落とす。
すると太子の頬が赤く染まる。

「ね?」

「それは…嫌だ」

あれもダメ、これは嫌、でも独り占めがしたい。
きっとこれは彼なりの最高の愛情表現なのだ。

「ふふふ、じゃあどうするか太子が考えてね」

太子の頭を撫でて言う。
きっともうすぐに見つかる。
彼の独占方法が。

















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独占欲望/太子
fin
2012.10.28

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