幸せな眠り 眠りから目を覚ます。 それは眠りという水面から静かに浮上するような感覚。 ゆっくり瞼を開けるとそこには自分とは異なる体温が目の前にあって無意識に微笑んでいる自分がいた。 その体温を確かめるように擦り寄ると私の動きによって目覚めた芭蕉さんがうっすらと覚醒する。 「ん…ど、したの?」 眠りと覚醒の狭間で私に声をかける芭蕉さん。 「ううん、なんでもない。」 「そ?」 「うん。」 私の言葉に安心したのか芭蕉さんはうっすらと笑うと私を胸に引き寄せた。 無意識に行ったのかもしれないが突然のことに身を固くしてしまう私。 そんな私の背を、子どもをあやすように寝かしつけるときのように優しく数回叩くと、芭蕉さんは再び眠りに落ちた。 「ばしょ、さん?」 「…………ん」 私の呼び掛けに芭蕉さんは声を漏らすがもう動かない。 でもなんとなく私の背中に回る芭蕉さんの腕が強く私を抱きしめてくれたような気がして幸せな気持ちのまま再び眠りに落ちた。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 幸せな眠り/芭蕉 fin 2012.03.26 (2012.03.26〜2012.09.03) |