嫉妬

この手でその魂を傷つけられたら、君はあいつを忘れてくれるだろうか。

そして、俺を憎んでその美しい魂に俺という存在を刻み込んでくれるだろうか?







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人間の魂は死ぬとこの天界にやってくる。
死んだばかりの人間は現世をよく覚えているが、少しずつ忘れていく。
全て忘れてしまった頃に魂が形を変えて次の生き物へと生まれ変わる。

その繰り返しを俺は見てきた。

たいていの人間は生まれ変わるたび姿形・性格・性別が変わる。
しかし、変わらない奴らがたまにいる。
それは全ての始まりと言われている人間の魂だ。

何て名前だっけ?
林檎食べてエデンを追い出された奴ら。
…ほら、あの。
ああ、そう。
アダムとイブ。

こいつらは何も変わらず生まれ変わっていく。
たまに、別の人間も変わらない事もあるけど。
けど、そいつらは時代に合わせてまた少しずつ変わっていく。
それなのに、この二人は違う。時代が変わっても再び魂が惹かれ合う。

なんともつまらない。

記憶が残っているわけでもないのに、同じ道を繰り返し歩む。
当然のように出会い、当然のように求め合う。
美しい君はまたあいつを求めて生きている。
あいつも同様に君を求めている。

何とも表現しがたい感情が心を蝕んでいるのがわかった。

神様が創った始まりの魂。
もしも、この天界を支配する俺が手を降したら何か変わるのだろうか。(一応神の中に入るんだろうし)

「閻魔さん。」

不安そうに俺の顔を覗き込みむその表情。
昔から何回も見た、狂いそうになるくらい愛おしい女。
俺はニコっと笑って見せた。
彼女は俺の笑顔見て嬉しそうに笑う。

「今日は何処に連れていってくれるのですか?」

汚れを知らないこどものようなその瞳で俺を見つめる彼女。
俺はおどけながら、さあ…と呟いた。

ああ、狂ってしまいそうだ。

今、おまえの愛する男は現世で生まれ変わったんだ。
きっともう少しでおまえも向こうに行くんだろう?



でも、そんなこと許さない。






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閻魔/嫉妬
fin
2009.10.20

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