だれのもの?

「なまえちゃん」

昼休み友達と昼食を食べようとしていたなまえを引き止める声。
声のする方に意識を向けるとそこには意外な人物が立っていた。

「あ、閻魔先輩。」

こんにちは、と友達と一緒に頭を下げると閻魔はへらりと笑った。

「や、久しぶり。」

「お久しぶりです、また河合君を探しているのですか?」

“また”というのは生徒会の一員である河合曽良が以前昼休みに行われる仕事をすっぽかしそうになったとき閻魔がこうやって直々に迎えに来たのである。
あの時もなまえが閻魔の対応をした。

「いや、今日は個人的な用事でさ。」

「そう…ですか。」

「うん、だからちょっとオレと話さない?」

「え、私が先輩と?」

突然の誘いに驚きを隠せずに声が裏返ってしまい、なまえは慌てて口を押さえた。
一緒にいた友達はニヤニヤと笑いながら「食堂に行ってるね」と言い残し去っていく。
彼女の後ろ姿を見送ると閻魔はにっこりと笑いなまえを人気の少ない話しやすい場所までエスコートしてくれた。

「どうしたんですか?」

今まであまり面識もない人物に呼び出されて緊張するなまえ。
しかも、相手は先輩で生徒会でそこそこ人気もある。

「うん、あのさ、どうして今期は委員会に入らなかったのかなって思って。」

「ああ…えっと……」

閻魔から出てきた台詞になまえは若干言葉を詰まらせた。
前期なまえはクラス委員長であった。それを後期になって降りて別の人が降任した。
その理由は二つ。
一つ目はなまえ自身人の上に立って仕事をするよりも誰かの支えとなっていた方が動きやすかったから。
その証拠に今期は副委員として就任している。
二つ目に生徒会への関わりである。
この学園の生徒会役員の人気は高い。
今目の前に立っている男もまた人気のある人物の一人で、今期委員長となった人はこの人と関わりが欲しくて就任したのではないかとなまえは考えていた。

「委員会に入ってないことはないですよ、だって私副委員ですから。」

「うん、知ってる。じゃなくて、何で委員長じゃないのかなって。」

「何で…って私には委員長は向かないな、って実感したんです。」

「ふぅん。」

二人の間に沈黙が流れ、なまえは妙に緊張した。
何より目の前にいる男がいつになく真剣な表情をして時々自分に視線を送ってくる。
今まで意識しないようにしてきたが改めて向き合ってみると閻魔に人気がある理由もわからなくもないような気がした。

「………でもさ。」

「は、はいっ!?」

緊張しすぎて閻魔の動作ひとつひとつに神経を使ってしまう。
なまえは心臓がいつもより早く動いているのを感じた。

「副委員ってあんまり生徒会と関連しないよな。特に今期、君のクラスは委員長ばっかりだ。」

「えぇ、まあ…」

それはうちの委員長が貴方に気があるからです、なんて口が裂けても言えないが思わず喉まで出かかってなまえ慌てて口を閉じる。

「オレ実はなまえちゃんが来なくなって淋しかったりしてるんだけど。」

閻魔の台詞に一瞬目を見開いたなまえだったが冷静に返す。

「そう、なんですか?」

「うん。」

先程とあまりかわらない閻魔の笑い方になまえはどうしていいかわからない。

「だからさオレと」

閻魔がそういいながら一歩前に踏み出そうとした瞬間真後ろから何者かの腕がのびてきて閻魔の肩を力強く掴んだ。

「いででで!?」

「か…河合くん?」

「こんなところで何をしているのですか?」

痛々しい程力強く掴む手の力を変えず、河合曽良はなまえに視線を送る。
冷たい視線になまえの肩が跳ねた。

「えと、閻魔先輩とお話しですけど。」

「どんなです?」

どんな、と問われなまえは返答に困った。

「それはっ………」

「痛い!痛い、さっさと離せよ!」

「…煩いですね。」

はあ、と溜息をついて閻魔を解放するとそのままなまえに近寄りなまえの肩を抱く。

「河合くん!」

なまえは首まで真っ赤に染めて声をあげた。

「貴女は黙っていてください。」

冷ややかだがどこか優しさの篭った言い方でなまえの声を制すと、曽良は閻魔を睨んだ。

「なまえさんに変な事をするなと以前言ったはずですが。」

「変な事って何だよ、オレはただ話してただけだけど。」

「それが変な事だと言っているんです。」

「お前なあ…彼女が誰と話そうが勝手だろ?」

閻魔が呆れたように言うと、曽良は口元だけ笑って言う。

「いいえ、勝手ではありません。」

「は?」

「昨日、なまえさんは僕の彼女になったので僕は彼女が誰かと一緒にいることに対し嫉妬することができるようになりました。」

「ちょっ……河合くん!」

「…………!」

「なのでなまえさんに今後近寄らないでくださいね、先輩。」

曽良はそういうとなまえを連れて教室へ去っていく。

「くそーっ、一足遅かったか…!」

一人残された閻魔は二人が教室に入った後、痛む心と肩を押さえて自室に戻っていった。


















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49200キリ番架さんリクエスト
だれのもの?/閻魔vs曽良
fin
2012.06.10

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