再会 芭蕉は一人空を見上げた。 縁側は太陽の光で温かい。 だが、どこか落ち着かないのはここになまえがいないから。 「君と一緒じゃないと不安になる。」なんてこどもか女子の台詞のようだが、この言葉が一番なまえへの想いに近いような気がした。 「ただいま帰りました。」 玄関から朗らかな声が聞こえる、 芭蕉は慌てて立ち上がると着物の裾の乱れを気にせずに廊下を走った。 「お、おかえり!」 ほのかに息を切らしてしまった己の体力の少なさに参ってしまったが、極力笑顔で出迎える。 芭蕉の笑顔に応えるように頬を緩ませたなまえ。 なまえは履物を脱ぐと芭蕉の目の前に立った。 「芭蕉さん、ただーいま。」 そういうと芭蕉の手を取って強くにぎりしめる。 「あ、えっと…なまえちゃん?」 「えへへ、芭蕉さん。」 甘えるように、感触を楽しむようにやわやわと手の強さを変えて芭蕉の手を握る。 「だってね、私…早く芭蕉さんに会いたかったの。」 握りしめた手を頬に擦り寄せて笑う姿に芭蕉は胸を締め付けられた。 「……っ、私もだよ。」 「本当に?」 「うん、本当に。」 芭蕉の言葉に満開の笑みを浮かべなまえは芭蕉の胸に飛び込んだ。 「おっととと…」 辛うじて受け止めた芭蕉だったが足元がヨタヨタと情けない。 それでも抱きしめる腕はいつもの抱擁より強くて。 「ただいま!大好き!!」 ほのかに香るなまえの匂いが肺を満たしていく。 それはたった一日ぶりだったけれど、芭蕉には永遠のように感じる永いものだった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 再会/芭蕉 (離ればなれ) fin 2012.05.04 |