交錯する思い

昼休み、私は昼食を買いに廊下をぶらぶらと歩いていた。
すると、偶然にも見慣れた背中を見つけて私は走り出す。
後ろで誰かが怒る声が聞こえたけど気にしない。

「芭蕉せんせ!」

息を切らして飛び付くと驚いた表情をした芭蕉先生がバランスを崩した。

「わわっ。」

「ああ、先生ごめんなさい。」

慌てて離れて芭蕉先生の顔を覗き込むと困ったように微笑んでいた。

「廊下は走っちゃダメだよ。」

芭蕉先生は私が走った勢いでぶつかってしまったと思っているのだろうか?
さっき誰かが言っていた事と同じことを言う。

「はあい。」

「うん、いい返事。で、そんなに急いで私に何か用かな?授業でわからないことがあった?君は確か…3組の………。」

そういって言葉を詰まらせた芭蕉先生。
わざとらしく私から視線をずらした。

「いいえ、先生がいたので声をかけたんです。」

笑顔で言うと先生は困ったように眉を下げた。
何度見ただろう。
私はいつもその表情を見るたび苦しくなる。

「それと私は3組じゃありませんよ。」

「そう…だっけ。」

「はい。もういい加減覚えてください。」

「ごめんね、担当するクラスが多いから…。」

申し訳なさそうにいう芭蕉先生だけど、きっとこの人は私の顔と名前を覚えているはず。
だってよく私を見かけると芭蕉先生は逃げるようにいなくなるから。

「知ってます。でも……」

「用がないならいいかな?次の授業の準備があるんだ。」

「…はい、じゃあ、5限目の先生の授業楽しみにしていますね。」

私はそう言って再び廊下を走り出した。


















走り去る背中を見つめながら胸を撫で下ろす。
彼女に声をかけられるたび、彼女から向けられる好意の視線を受けるたび彼女に惹かれている自分がいる。
彼女に触れられた背中がまだ熱い。
はあ、と小さく息を漏らした芭蕉は姿勢を正して彼女が走り去った後を追うように歩き出した。



















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交錯する思い/芭蕉(学パロ)
fin
(2011.08.02〜2012.03.26)

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