sweet day よく晴れた休日の午後。 室内には甘い香りが広がる。 「妹子ー、お菓子食べる?」 幸せそうに微笑んだなまえが持つのは焼きたてのクッキー。 出来立てほやほやの美味しそうなクッキーである。 「ん?うん、食べる食べる。」 妹子はなまえの声に反応しながらも意識は完全に明後日の方向に向いている。 顔もあげずに手元にある新聞紙を読み続ける妹子。 「今日は何を作ったと思う?」 「んーーー…」 ニコニコと幸せそうに微笑みながら妹子へ問い掛けるなまえ。 辛うじて反応はするものの一瞬たりとも意識を向けず、問いかけへの答えもない。 なまえは妹子の態度に苛々した。 「もう、ねぇ、聞いてる?妹子は食べないの?」 「…食べるって言ってるだろ。」 彼女の苛々が妹子にも伝わって何となく険悪な雰囲気。 「いいよ、別に食べなくても。私一人で食べますから。」 思わず口走ってしまった刺のある言葉。 こうなったらもうなまえは引き下がれない。 「はあ?」 流石に妹子も顔をあげてなまえを見た。 そこにいたのは顔を赤く染め目に涙をためた可愛い恋人の姿。 更になまえは心にもないことを口走る。 「いいです、いいですよーだ。私一人で食べて、私がどんどん太って、妹子の彼女は横綱だって言われちゃえばいいんだわ!」 なまえはそういうと手にしていた皿からクッキーを数枚持って口の中に放り込む。 ボリボリと音を立ててクッキーを食べ進めていくが口に入れた量が彼女の食べられる数よりも多かったため飲み込むことが出来ず結局むせてしまった。 「ッ…………ゴホッ…………ゲホッ!」 そんななまえをみて思わず噴き出した妹子になまえはますます腹を立てた。 「…はひ……ゲホっ………ひょ!」 「ちょっ……なまえ!笑わせないでよ」 妹子は笑いすぎて出て来た涙を拭うと、目の前で悔しさで涙を流すなまえを抱き寄せた。 「むぐっ…ゲホ…ゲホッ」 何か言いたそうななまえだったが咥内のクッキーだったものが邪魔で喋ることが出来ない。 どうにか妹子の抱擁から逃れようと妹子の胸を押し返す。 しかし力の差は歴然でびくともしないどころか寧ろ暴れたら暴れた分だけ抱擁は強くなる一方だ。 「ばっか…嫌い。妹子…嫌いなんだからあ」 押し返すことを諦めたなまえは弱々しく妹子の厚い胸板を叩くことしか出来なかった。 そんななまえの髪を指先で撫でてやる。 「ごめん。まさかなまえがそんなに怒るとは思わなかったから。」 耳にかかる髪をすくいあげ、露になった耳に囁きかければなまえは大人しくなった。 「嘘だもん、妹子は嘘つきだ。」 「何が?」 「私が怒ること…わかってて無視した。」 「む…無視じゃないよ。」 抱きしめていたなまえの顔を覗き込んで妹子は否定するが、完全に図星だ。 なまえは露骨に嫌な顔をしたが諦めたのか、小さく溜息をついて妹子を見上げた。 「今日は私…機嫌が悪いから。」 釘を刺すように言うと、妹子は笑う。 「はいはい、わかってますよお姫様。」 そういってなまえの額にキスをした。 「よろしい。」 「有り難き幸せです。」 まるで茶番劇のような二人のやり取り。 二人は目を合わせると笑い出した。 「っ…くくっ。」 「ははは、…さ、美味しそうなクッキーいただこうかな。」 「あ、お茶いれるね。」 「ん、僕も手伝うよ。」 さりげなく手を繋ぎ二人は立ち上がる。 妹子は空いた手でなまえの頭をくしゃりと撫でて、微笑んだ。 つられるようになまえも微笑み繋いだ手に力を込めてお互いの幸せを確かめ合うのだった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 中村さんリクエスト sweet day/妹子 fin 2012.03.14 |