想い くだらない話ほど時が経つのを忘れるくらい盛り上がる。 今の私たちがそれだ。 「あちゃー…随分暗くなったな。通りで寒いと思ったぜ。」 平田が空を見上げそう呟く。 辺りが暗いので白い息がよく見える。 私は平田の口から吐き出された白い息を見ながら、時の流れの早さを怨んだ。 「そう、だね。」 平田がこちらを見る前に俯いて荷物をまとめる。 もうこんな時間だ。 私たちはもう一緒にいられない。 彼は彼の大切な人の元へ行くのだろう。 私は彼にとって「唯の友達」だからこれ以上一緒にいられないんだ。 そりゃ、今日が終わっても明日や明後日があるけれど、今日はもう一緒にいられない。 「なまえ、そろそろ帰るか。」 平田から告げられる別れの言葉。より きっと嫌われるよりずっと嫌な言葉。 「…うん。」 私が荷物を持って立ち上がると平田も同じように立ち上がる。 そして、平田は私の顔を見るとニッと口角をあげた。 「暗いし、家まで送るよ。」 「…え、いや……悪いよ。」 「何言ってるんだよ、こんな暗い中、女を一人で帰らせるわけないだろ。」 平田はそういうと私の手首を掴んで歩き出す。 彼に掴まれた部分が熱い。 「そんな、私は大丈夫。」 「いいだろ、俺が送りたいんだから。」 予想外の言葉に手首どころか全身が熱くなるような感覚に陥ってしまう。 今だけは自惚れてもいいだろうか。 「ありがと、平田。」 私は小さな声で平田の背中に向かって呟いた。 「ん。」 平田はこう見えても強いんだぜ?と言うとこちらを振り向かずに私の腕を引く。 少しだけ平田との距離が近づいたような気がする。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ アメちゃんさんリクエスト 想い/平田 fin 2012.02.29 |